2.愛着
2−1. 愛着とは
Bowlby(1969)によって提唱された愛着理論によると,乳幼児には生まれつき,自分の生存を確保するためにできるだけ養育者の近くにいようとする行動システムが備わっている。愛着とは特定の対象との情緒的な結びつきを指し,乳幼児が特定の他者との情緒的な相互作用を通して形成される絆のことである。危機的な時に特定の対象から支援・保護を受けられるという確信や信頼感であるともいえる。養育環境や養育者との関係によって愛着形成に個人差があるとされている。
養育者との関係・相互作用を通して,子どもは養育者と自分自身に対して,それぞれの主観的な信念や期待を形成させていく。子どもは,自分は養育者に受容してもらえるのか,養育者は自分の要求に反応してくれるのか,といった養育者への信念や期待と同時に,自分は愛される価値があるのか,といった自分自身に対する信念や期待を形成させていく。このように形成された養育者との関係性は,発達の過程で個人のうちへ内在化されていき,青年期においても様々な社会的状況で影響する(Dykas & Cassidy,2011)。Bowlby(1973)は養育者との関係が内在化し,他者との関係の取り方として機能するものを内的作業モデルと概念化している。
2−2. 成人愛着について
青年期の愛着は,乳幼児期に形成された愛着にある程度沿って発達していく。成人愛着は,対人関係における認知や行動,感情,社会的な適応性にまで影響を及ぼしているとされている(金政,2003)。
2-3. 親への愛着について
Bowlby(1973)は,愛着理論において,青年期でも親は安全基地となり,自律を促す働きをしていると述べている。青年期においても,親への愛着は青年の発達や社会適応に大きな役割を果たしていることが述べられている(丹羽,2005)。中尾・加藤(2004)の成人愛着スタイル尺度(ECR)の日本語版においては,成人愛着を親密性の回避・見捨てられ不安の二次元で捉えられている。見捨てられ不安(自己観)は自己についてのネガティブな信念や期待であり,親密さへの非常に強い欲求や、親密さへの欲求が満たされないこと,すなわち相手から受容されないことに対する不安である。親密性の回避(他者観)とは,他者についてのネガティブな信念や期待であり,親密になることに対する抵抗と,心理的独立性を維持しようとする欲求である。親への愛着不安が高まると,他者から見捨てられる不安感や焦燥感から他者からの受容を引く見積もり,他者から受容されていないと感じることが明らかにされた(金政・浅野・古村,2017)。
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