1.はじめに


 近年,CDや配信の売上が不調な状態が続いている一方で,ライブ・コンサートの公演数,入場者数,市場規模はともに増加傾向にある。
日本において,CDの年間販売数(日本レコード協会集計対象シングル,12cm)は,1998年の3億291万3000枚をピークに漸減し続けており,10年後の2008年には2億4221万2000枚2018年には1億3720万5000枚と,20年間で半分以下まで縮小した。また,2005年から急激な成長を遂げ,CDの代替媒体として期待された,着うたフル・itunesを始めとする有料音楽配信も,2015年以降,ダウンロード販売が全般的に低迷の方向を辿るようになった(日本レコード協会,2020)。そのような中,ライブ・エンタテインメント市場は2003 年頃から急激に伸び始め(コンサートプロモーターズ協会,2018),2018年のライブ・エンタテインメント市場規模は,最高の5862億円(前年比13.8%増)を記録し(ライブ・エンタテインメント白書,2018),現在もその規模を拡大し続けている。しかしながら,インターネットの普及やメディアの多様化,動画共有サイトの登場などによって,経済的コストや物理的なコストをかけなくても音楽を楽しむことが容易になった環境下において,ライブ・コンサート市場が継続的に成長を続けるためには,ライブ・コンサートが,参加者自身にとって消費に値する価値を与えてくれる「場」として発展していく必要がある(西口,2015)。



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