5.食行動と対人関係


 竹田(2012)は,摂食障害の研究からBN患者(Bulimia Nervosa:神経性過食症患者)において,他者からの理解や評価の希求によって葛藤のない対人関係を形成することや,自己存在の覚束なさを感じることによって相互理解のない対人関係を形成することを明らかにしており,食行動は対人関係と関連していることを示唆している。 市村・楠見(2019)によって,学習場面において諦め行動が多くなるほど持続性や自己効力感が低下しやすいことが明らかになっている。しかし,日常的な食事場面においては「親に作ってもらう」「友達に食事に誘われる」といった機会が想定され,こういった場面で食事を制限することは「作ってもらった食事を拒否すること」「誘いを断ること」につながり,断ることを躊躇しやすいと予想される。ダイエット行動の中断・諦めの背景には他者の存在が関係している可能性がある。坂(2010)は異質拒否傾向(異質な存在を拒否する傾向)と被異質視不安(異質な存在にみられることに対する不安)という概念を取り上げ,友人関係満足度と関連していることを指摘している。ダイエットの中断の要因となりうる「誘いを断ったら友達から取り残されてしまうかもしれない」という不安はこの異質拒否傾向と被異質視不安からとらえることができるのではないだろうか。また,鈴木(2014)による女性のボディイメージの研究から,女性同士の視線が痩身願望を増長することが明らかにされ,痩身願望には他者からの評価が影響していることが示唆されている。 これらのことからダイエット行動には,他者との関係をどのようにとらえるかという観点は切り離せない要因であると考えられる。本研究では対象を大学生とするため,親元を離れ一人暮らしをしている学生がいること,また同性からの視線がダイエットに関連していることから(鈴木,2014),対人関係については,親ではなく同性の友人に対する友人関係(被異質視不安,異質拒否傾向)に焦点を当て,検討する。     



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