1.はじめに
今の時代は特に女性において「痩せた体こそが理想的である」という風潮がある。厚生労働省が行った国民健康・栄養調査によると,やせの者の割合は男性3.9%,女性11.5%であるが20歳代女性のやせの者の割合は20.7%と20歳代女性において目立って高くなっている。広瀬(2020)の研究では,大学生女子において全体の約65%は標準体重よりも痩せ寄りであることや,痩せ寄りの標準体重の群ですでに約8割にやせ願望があり,やせ願望の程度も強いことが現状として示されている。一方,肥満者の割合は男性33.0%,女性22.3%であり,男性では平成25年から令和元年の間に有意に増加している(厚生労働省,2019)。また,子どもに関しても肥満傾向児の増加がみられている。文部科学省が行った令和元年度「学校保健統計」における5〜17歳の子どもの肥満傾向児・やせ(痩身)傾向児の調査によると,前年度と比較して肥満傾向児の出現率は,男子では16歳を除いた各年齢,女子では6歳,15歳を除いた各年齢で増加している。このように,各世代の男女において様々な体型に関する課題を抱えている。
無理なダイエットや「やせ願望」におけるリスクとして,女子の不正月経や骨密度が低い傾向があるなど身体的に悪影響を及ぼしている可能性も示唆されている(金田他,2004)。また,子どもの肥満は骨密度の低下を引き起こすこと(渋谷・菅沼・有井・玉利,2012)や,心血管年齢が実年齢より高いことは肥満が有意に関連していること(村谷,2020)が明らかにされている。2000年に始まった健康施策である「健康日本21」において「20歳代女性のやせの者を15%以下にする」,「20〜60歳代男性の肥満者を15%以下にする」,「40〜60歳代女性の肥満者を20%以下にする」という具体的な目標値が掲げられたが,未だ達成の兆しはなく,男女ともにダイエットとの適切な付き合い方を検討していく必要がある。
ダイエットの現状に関しては,RIZAP株式会社による調査(2019)から,都道府県別ダイエットの成功ランキングでは1位の滋賀県が51.4%,47位の岩手県では20.5%であるという結果が報告されている。1位の県ですら成功しているのは半数程度であり,最下位の県では成功している人は五分の一程度であることからも,ダイエットは多くの人に取り組まれてはいるものの,成功しない場合が多いと考えられる。
若年女性のやせの者の多さ,男性の肥満者の増加,ダイエットの成功率の低さなどから,現在,男女ともに適切なダイエットとの付き合い方を検討する必要がある。そこで本研究では,対人関係,痩身願望,目標志向性の観点からダイエットに成功するにはどのような要因が影響しているのかを検討していく。
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