2.ダイエットの問題


ダイエットは「体重を維持,あるいは減量するために意識的に食物摂取を制限する」(松本・熊野・坂野,1997)ことであり,主に精神医学の分野において研究されてきた。「むちゃ喰い(Binge eating)」と呼ばれる,自制不能な激しい摂食行動により,短時間のうちにきわめて大量の食物を食べるといった食行動の乱れが若い女性たちの間で広がっており(幸田・菅原,2009),摂食障害の前駆的な兆候である体型不満は小学生の時点ですでに生じていることが明らかにされている(伊藤他,2016)。ダイエットには,「甘いものやカロリーの高いものを食べるのを避ける」といった徐々に体重を減らしていくような比較的健康的な構造的ダイエットと,「1週間で3キロ以上痩せようとして,低カロリーな食事をする」といった急激に体重を減らしていくような不健康な非構造的ダイエットがある(松本他,1997)。松本他(1997)によると,摂食障害傾向が高くなるにつれて,構造的ダイエットも非構造的ダイエットも高頻度で行うようになるが,摂食障害群では特に非構造的ダイエットの頻度が高いことが示唆されている。このように食行動の異常に関する研究は多くなされているが,日常的に取り組まれているダイエットについてはまだ十分に検討されていない。そこで,本研究では広く大学生に取り組まれている病的でないダイエットに着目する。

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