5.対人的志向性について
2020年度は,コロナ状況下で,対面的な一斉教授型授業はもとより,ALも実施が困難な状況になっている。先に,大学におけるオンライン授業の状況をネガティブに捉えている学生が多いと予想すると書いたが,果たしてそうであろうか。対面授業は,授業者や他の学習者が場所を同じくし,他者の存在を意識する空間で行われる。一方オンライン授業では同じ空間に他者はおらず,画面越しの他者の存在をどのように認識するか,このような点について比較検討された研究は今のところ見当たらない。
たとえば教室における対面授業では,必然的に他者と関わることになり,それが苦痛であるために不登校になる児童生徒もいる。こういう児童生徒にとっては,オンライン授業は自宅で受講できる形になり,ありがたい方法かもしれない。つまり,対人場面の捉え方によって,授業形態(今回の場合は,対面かオンラインか)の違いにおける適応感が異なると考えられる。これに関するパーソナリティ変数として「対人的志向性」(斎藤・中村,1987)が挙げられる。対人場面における他者の行動に対する反応性や,他者への関心における個人差要因を統合した変数であり,「人間関係志向性」「対人的関心・反応性」「個人主義傾向」の3つの下位因子で構成される。本研究では,このパーソナリティ特性が授業形態とどのように関連し,授業の受容度においてどのような影響があるのか検討する。
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