4.ICTの活用について


 「はじめに」で述べたように,近年ICT は急速に普及しており,多くの人にとって身近なものになっており,学校場面にも浸透してきている。 文部科学省(2019)は,「GIGAスクール構想の実現へ」において「1.1人1台端末と,高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備することで,特別な支援を必要とする子供を含め,多様な子供たちを誰一人取り残すことなく,公正に個別最適化され,資質・能力が一層確実に育成できる教育環境を実現する。2.これまでの我が国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより,教師・児童生徒の力を最大限に引き出す。」ことを目的に「GIGAスク―ル構想」を掲げている。

 また,家庭で動画コンテンツなどを視聴している子どもたちにとってスマートフォンやタブレット端末は身近なものであるため,学習の場においても活用していこうというものである。タブレット端末等を活用することで,教員は子ども一人ひとりの考えを知ることができたり,子どもの教育ニーズや学習状況に応じた個別学習を提供できたりするなどのメリットが挙げられる。 そのような状況のなかで,2020年度には小学校においてプログラミング教育が必修化された。ヨーロッパにおいては,「IT力」が若者が労働市場に入るために必要不可欠な要素として認識されている。日本においても2020年までに37万人ものIT人材が不足すると言われており,今後の国際社会を生き抜いていく上で子どものうちから「IT力」を育成し,視野を広げておくことは重要なことであると言われている(文部科学省,2018)。

 実際に行われているICT教育の事例として,「反転授業」が挙げられる。反転授業とは,授業と宿題の役割を「反転」させ,授業時間外にデジタル教材等により先に知識習得を済ませておき,教室では知識確認や問題解決学習を行うことを指す(重田,2014 )。近畿大学附属高等学校では,2013年から一部の授業において反転授業を実施し成果が挙げられている(教育家庭新聞,2013年10月7日)。このようなICTを活用した教育は推進され,タブレット端末の他にも電子黒板やプロジェクタ等を使った授業が行われている。ICTは教育現場にとって,身近で欠かせないものとなってきている。しかしながら,まだまだ発達段階であるといえるだろう。 高等教育においてもICTを活用した授業は増えてきている。

 須藤・滑田・宇賀田(2020)は,高等教育においてオンライン上で動画を活用した授業を行い,授業に対する受容度と情報機器スキルと日常的な動画メディアとの接触頻度・学習動機づけの関係について調べた。その結果,スマホの操作レベルや学習動機づけに有意な結果が見られた。すなわち,学習者の情報リテラシーの高さが求められることが示唆されている。また,学習したいと思っている動機づけの高い学生にとっては自宅での生活時間の中に「学習」時間が組み込めるが,動機づけの高くない学生にとっては,生活時間に「学習」時間を組み込むことの困難さが指摘されている。



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