結果と考察
6.本来感,自己受容の変化の原因の検討
一方,上位の生徒の記述からは,「ありがとうといわれてうれしく思った。(生徒18,感謝,1日目)」,「朝によゆうができて楽だった。(生徒57,思慮深さ,2日目)」,「一言、言っただけで変わることを感じました。(生徒68,超越性,2日目)」のように,理由付きで感情をとらえていることが読み取れる。これは,自分がとった行動に伴う感情を整理して,意識できているととらえることができる。このことから,強みを理解し,活用することによるメリットに気づいて行動に移すことができているのではないかと考えられる。その結果,ポジティブな感情を得て,自分を肯定できたのではないかと考えられる。これが,本来感,自己受容得点の上昇の原因ではないかと推測する。
また,上位の生徒の記述では,「手伝ったときに感謝された。自分が足をケガしたときにこういうふうにされてうれしく思ったことを思い出した。(生徒18,社会的知性,4日目)」,「恥ずかしがらずに大きな声でお礼を言うようにする。そうするとそれを聞いた人はもっといい気持ちになると思うから。(生徒46,感謝,1日目)」,「(テスト勉強の時間が)少しの時間だったので、苦手な教科にしなくてよかったなと思い、いい時間の使い方だったなと嬉しかった。(生徒57,思慮深さ,5日目)」とあるように,自分のとった行動を客観視できていることが読み取れる。そして,自分のとった行動の良い影響について考えることができていると読み取れる。また,自分の行動を振り返ることは,強みの活用方法を見直すことでもあると考えられる。これらのことから,自分のとった行動を振り返り,肯定できたこと,次の強みの活用への見通しが立っていくことで,「自分はこれでよい」と思えたことが,本来感,自己受容得点の上昇の原因になったのではないかと考えられる。
さらに,上位の生徒の記述からは,「感動した。悲しかった、くやしかった。(生徒4,審美眼,1日目)」,「『手伝ってくれてありがとう。』と言われてうれしかった。(生徒18,社会的知性,3日目)」,「授業の時間にしっかりと間に合い安心した。(生徒57,思慮深さ,4日目)」,「自然の力ってすごいと感じました。(生徒68,超越性,2日目)」といった,ポジティブな感情(喜び,嬉しさ,驚きや感動)を素直に表現している様子がみられた。これは,たとえネガティブな感情があったり,日常の何気ない小さな出来事に対する気持ちであったりしても,感じた気持ちを拾うことができていることの表れであるととらえることができる。これらのことから,単純なことでも,自分の気持ちに注目し,確認していくことが,直接的ではないとしても,本来感,自己受容得点の上昇の原因になっているのではないかと推測する。
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