結果と考察


 分析対象は,70 名であった。欠席等の関係で,一部しか参加できなかった生徒も研究に参加したということで,除外せず,結果を用いることとした。

1. 生徒が自覚した強み

 中学生の生徒たちが,自分の強みを自覚できているのか,その中で,選ばれやすい強みは何かを検討することを目的に,生徒たちが選んだ強みと割合を分析した。結果を Table 3に示す。自分の強みとして最も選ばれたのが「感謝」(19 人,27%)であり,次が「ユーモア」(13 人,19%)であった。次いで「忍耐力」,「審美眼」(各 5 名,14%)で 60%になった。そして,「思慮深さ」(4 名,6%),「誠実さ」,「親切心」,「チームワーク」(各 3 名,13%),「向学心」,「リーダーシップ」,「寛容さ」,「慎み深さ」(各 2 名,11%),「創造性」,「熱意」,「愛情」,「社会的知性」,「公平さ」,「希望」,「超越性」(各 1 名,10%)と続いた。なお,「好奇心」,「知的柔軟性」,「大局観」,「勇敢さ」,「自律心」の5つは選ばれなかった。

 まず,多くの生徒が選んだ強みは,「感謝」,「ユーモア」で半数近くであった。選ばれやすかった理由として,強みの話を始めて聞いた中でも,強みの名称から対象となる行動が連想しやすいこと,日常生活の中で行動に移しやすいこと,学校や家庭など場面を問わず活用できること,仲間や家族など人との相互関係の中で使えることが考えられる。次に多かったのが,「忍耐力」,「審美眼」,「思慮深さ」であった。これらが選ばれた理由としては,測定により,自分の中に潜在的にあった力に気づけ,自分の強みとして認識できたからではないかと考えられる。

 小学生を対象とした伊住(2019)では,「親切」(12%),「チームワーク」(10%)が上位に来ており,「ユーモア」(約9%),「感謝」(約5%)であった。また,「審美心」(約5%),「勤勉(忍耐力)」(約 2%)と割合が低く,「思慮深さ」は選ばれなかった。選ばれやすかった強みについて,伊住(2015)は,仲間と共に生活・学習する日頃の学校生活において児童に重要性が認識された道徳的価値と関係する強みが多く選ばれたのではないかと述べている。

また,高校生を対象とした森本他(2015)でも,「親切」(9%),「審美心」(9%),「向学心」(8%),「誠実性(7%)」が上位にみられ,「感謝」(5%),「ユーモア」(5%)であった。選ばれやすかった強みについて,森本他(2015)は,高校生活の中で実行しやすいと考えられるものが多く挙げられたと述べている。

これらの先行研究との比較から,本研究における中学生は,日頃の学校生活の中で活用しやすいことに加えて,自分たちが楽しみながら,気軽に活用できる強みを選択したのではないかと考えられる。そして,中学生は,小学生ではあまり選ばれなかった強みでも,意味を理解して,活用できたこと,高校生で選ばれた強みと似たような強みが全体的に選ばれ,活用されたことが分かった。





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