1.はじめに
青年期の大きなライフイベントとして大学受験がある。それぞれの経験や将来の夢を基に志望校を決定しそこに向け勉強に励み大学受験に挑む。その中で,志望する大学に合格できる者もいれば,合格できない者もいる。近年大学入試において,第一志望の大学に合格できる可能性は高くない。大学受験に関する調査(スタディチェーン,2020)によると,受験者全体の58%が第一志望の大学に合格できなかったと回答している。つまり,受験生の内約半数は希望する大学に通うことが出来ず,第2志望や滑り止めの大学に通うか,浪人をして再度挑戦し直すかの選択をすることになる。
山田(2006)は,大学入学後の不適応には入学関連要因があると考え,希望通りでない大学に入学したという不本意感が大学入学後の不適応に影響していることを明らかにしている。
大学への適応支援として,奨学金といった金銭面での支援や入学後の不安を解消するため相談窓口によるサポートなどが行われている。しかし,大学への適応に関し不本意感が影響を与えているのであれば,不本意入学に対する具体的な経験に注目し,不本意入学者がなぜ大学に適応しにくいかを考える必要がある。また,これらを踏まえた上で,不本意入学者への適切な支援を行う必要があるだろう。大学生活への適応感と満足感に関する要因を研究した庄司(2011)は,不本意入学者に対して,大学は学内の雰囲気や入学早期の教育環境,生徒間の対人関係サポートを考慮することが重要であるとしている。
不本意入学をした人の中にも大学に馴染むことが出来ず,学業に対する意欲を失い大学中退や休学を選択する人がいる。一方,不本意ながら入学した大学に適応し楽しく大学生活を送る人もいる。不本意ながら入学した人がどのように適応していくかを知ることは,大学生が精神的健康を保った生活を送るために重要な示唆を与えてくれるといえる。
しかし,不本意入学をどのように経験し,その後大学生活にどのように適応していくのかというプロセスについての実証的研究はほとんど行われていない。
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