結果と考察
1.分析の視点
本研究では,web質問紙への回答,十答法を用いた努力観についての記述,半構造化面接から,成果につながらなかった過去の努力経験を大学生はどう捉えるかについて検討する。具体的には,①大学生はどのような努力観をもち,努力観はどのように構成されているのか。②成果につながらなかった過去の努力経験を大学生はどのように捉えるかの二つに焦点を当て,インタビュー内容を中心に分析する。
エイムズ&アーチャー(1987)によると,自己を比較対象とし,自己の能力を伸ばしたいという目標である熟達目標は,学習や理解を通して自らの能力や技術を向上させることに焦点を当て,結果よりも学習のプロセスを重視した目標である。そのため,熟達目標を掲げ,自らの能力や技術を向上させることに焦点を当てて努力をした経験の場合,成果につながらなかったとしても,努力したという過程に意義を見出すことができるのではないだろうか。また,問題に直面している人の傷つきや喜びなどの,情緒面に働きかけ,行動や考えを是認する情緒的なサポート(浦,1992)の影響が大きいことが予想される。
そこで本研究では,個人の持つ努力観との関連だけでなく,「目標」「携わった人」の側面から,成果につながらなかった過去の努力経験を大学生はどのように捉えるかについても検討することにした。
これを検討すべく,まず努力観について,十答法で得られた190個の記述について浅山(2021)を参考にし,浅山と同様の大カテゴリーである【肯定的信念】,【否定的信念】,【規定因】,【動機づけ】【努力についての考え方の信念】の5つの大カテゴリーに,内容の類似性に基づいて分類を行い,個人の持つ努力観を確認する。続いてインタビューにおける回答について,半構造化面接法で収集したデータを質問ごとに類似性に基づいて分類を行う。これらの検討を通して,努力観の検討で得られた結果とインタビューの検討で得られた結果から,成果につながらなかった努力経験を大学生はどのように捉えるかを明らかにする。
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