インタビュー調査について
3-1成果につながらなかった過去の努力経験について
まず,成果につながらなかった過去の努力経験について半構造化面接法で収集したデータをカテゴリー化した。努力した経験として挙げられた活動はTable4の通りである。本文中のIDは,この表の研究協力者IDを表す。
中学校と高校での部活動の経験と高校・大学受験の受験勉強の回答が多くあげられた。例えば,ID5は高校での部活動(バスケットボール)で,県大会ベスト4をかけた戦いに向け,チームメイトと共にチーム目標を掲げ,日々の練習で努力した経験をあげた。ID8は,高校での部活動(サッカー)で,公式戦にでて,みんなと一緒にサッカーをするという個人目標を掲げ,日々の練習で努力した経験をあげた。ID2は,大学受験で,第一志望の大学に合格するために高校二年生の3月から受験勉強で努力した経験をあげた。この他に就職活動(ID13),サークル運営(ID12)などがあげられた。
3-2成果につながらなかった努力経験中の目標について
協力者が設定していた目標を,内容の類似性に基づいて個人目標とチーム目標に分類した。さらに「個人目標から得られたもの」「チーム目標から得られたもの」「個人目標とチーム目標とで得られたもの」の3つのカテゴリーに分類した。
「個人目標から得られたもの」は3つのカテゴリーから構成された。「自分が頑張っているのを感じられる。自分が成長しているのを感じられた」では,ID8は,「元々サッカーが好きで,やっているのが楽しかったら,自分で頑張っているのとか,前に進んでいる感があって良かったです。サッカーに夢中になって頑張っている時間っていうのが良かったと思っているから,結果よりも過程の方が得られたものが大きかったと思います」というように,個人目標を掲げた協力者が,自己成長について挙げていた。「自分が頑張った経験として自信になった」では,大学受験(ID3)や部活動(ID10)といった活動の中で,「あまり長い期間継続して努力したことがあまりなかったので,「自分は長期間努力をすることができる」ということが分かって,自信になりました(ID3)」「苦しかったけど,一つのことに対してあれだけ努力できたという経験が自信になって,また何かに努力することがあったら,その時もきっと頑張れるだろうと思えるようになりました(ID10)」というように,個人目標を掲げた協力者が,自分が頑張った経験として自信になったことについて挙げていた。「他人への憧れから,理想像を目指して努力する」では,サッカー(ID8)や人前で上手く話すこと(ID16)といった活動の中で,「うまい子のプレーを見ると自分もうまくなりたい,試合に出たい,うらやましい,と思って,それがモチベーションにもなったし,努力する気持ちにさせてくれたと思います(ID8)」「理想の姿をみて,こうなりたいという理想を具体化してイメージするようにしていました(ID16)」というように,他人への憧れから,理想像を目指して努力したことについて挙げていた。
伊藤(2004)は「自己志向的動機」とは「自分のため」に努力することを積極的に肯定することと定義している。本研究の個人目標を掲げた協力者のインタビュー内容の「努力したら努力したぶんだけ自分のためになるし成長できると思う(ID6)」「最終的には自分の自信になったし自分らしさに繋がっている(ID16)」などの言葉から,個人目標が自己志向的動機から形成されている傾向があったと考えられる。個人目標を掲げた協力者は,他者からの応援が努力に影響していたが,チーム目標を掲げた協力者よりも,他者からのプレッシャーや期待はあまり努力に影響していなかった。例えば,「一緒に勉強してくれる友達は、いないよりいた方が勉強のモチベーションが高まると思う(ID6)」「(受験の)結果には多分影響はなかったと思うが、勉強って嫌なものだったけど、友達がいたからそんなに嫌にならずに頑張れた(ID2)」というように,携わった人物からのプレッシャーはあまり努力に影響していなかった。伊藤(2007)は,他者評価を気にかけず他者志向的動機も低く,他者と距離を置いている傾向にある人を「独立的自己志向的動機群」と呼び,独立的自己志向的動機群は他者からの期待に伴うプレッシャーを意識していないことに着目している。努力経験についても,個人目標を掲げた協力者の方が,自己に焦点をあてて努力経験を振り返っている傾向にあったと考えられる。
「チーム目標から得られたもの」には,ID1は,「自分だけのものじゃなくてみんなと協力して頑張ったから良かったです。チームスポーツは1人じゃ無理だから,結局やっぱ自分のためだけじゃなくみんなのために頑張るっていうのも,今思えばそれが1番あらわれたのではないかなと思っています」というように,自分のためでもあり他者のためにも努力した経験を挙げていた。ID19は,「誰もサポートしてくれる人がない中で,一緒に頑張る人がいない中で,努力することは無理だと思います1人でやるのはつまんないし,ずっと10年ぐらいチームスポーツをやっていたから想像もしにくいけど,ひとりで頑張るのが難しい性格だから途中でやめると思うし,続けて努力しようとも思わないと思います」というように,他者と一緒に努力することの大切さを挙げていた。ID5は「僕自身もほかの人が努力していると,応援したくなるし,そういう考えで,自分も努力していたっていうのがあって, 努力していた時に周りからの気持ちが伝わってきたから,それを高校の時に努力できて,ポジティブって捉えることができたのが大きいと思っています」というように,周りがチームのために頑張っているから自分もチームのために頑張ろうと他者の存在が努力のモチベーションにも繋がっていることを挙げていた。また,ID12は「責任感があったので,結果に出せなかったし申し訳ないという気持ちもあって,この努力は自分のためというよりかは,サークルのためや人のために頑張った努力だったので,自分のことだったら達成できなくてもしょうがないかと思うこともあるけれど,人のためだと,後悔や責任感や申し訳ない気持ちが強くなりました」というように,自分ためではなく人のための努力だから,活動の失敗への気持ちが大きく,結果に表れなかったことを重く受け止めることを挙げていた。そして他者のために頑張った努力経験は,反対に,みんなで頑張ったことだから一人の責任は軽いとも捉えることができる。
伊藤(2007)は,努力志向を分類し,他者評価を重視し他者志向的動機の否定的側面を認知しているが,依然として他者志向的動機が高い人は,他者との関係性のなかで「相手が応援,援助してくれるから自分も頑張らなければ」といった互恵性が重要な役割を果たしていると推測し,「互恵的他者志向動機群」と呼んでいる。ID5の,「同い年の子が,頑張って努力しているところを見ると,自分もやっぱり努力したいなと思うし,努力しても辛い時はあるから,そういう時に,高校の時だったら先生や親御さんが「頑張れ」とかプラスになる言葉を言ってくれた。今は,先生とかそういう存在がいないので,やっぱり諦めちゃうっていうのが大きい(ID5)」という発言のように,他者との関係性の中で互恵的他者志向動機群と同様の傾向がみられた。チーム目標には他者との関連が大きく,チーム目標を掲げた協力者は,努力の動機づけも他者志向的な傾向にあると考えられる。
「個人目標とチーム目標とで共通して得られたもの」には,ID9(個人目標を掲げた協力者)やID19(チーム目標を掲げた協力者)は,「携わった人がいない状況を考えられないし,つぶれていたと思います。気にかけてもらってなかったりしたら,苦しかったと思うし,辛い時頑張れたかって言うと影響はあると思います。家に帰った時に,話を聞いてくれるだけでも心の支えになったし,応援してくれているのも感じたから,途中であきらめたりしないで努力しようというモチベーションにもつながっていました(ID9)」「努力経験をしている中でつらくなったときや苦しかった時は,同級生と親に話したり助けてもらったりしました。いっぱい怪我をしてへこむことが多かったので,その時は励ましてもらいましながら気を使ってもらいながら,心を支えてくれました(ID19)」というように,個人目標でもチーム目標でも他者からの情緒的サポートが大きく影響していることを挙げていた。努力経験中の情緒的サポートは,個人目標であってもチーム目標であっても共通して得られるものであり,どちらとも携わった人の影響は大きかった。ID10(個人目標を掲げた協力者)やID19(チーム目標を掲げた協力者)は,「練習量よりも,あがり症な事を受け入れて,今後大事な場面に遭遇した時にはこの経験を活かしていかないといけないと思っています。この経験を生かさないと意味がないのかなと思っています(ID10)」「忙しい中でも頑張っていたから結果がどうであれ,頑張り方を知っているから,何も頑張ってこなかった人たちよりは絶対にいい経験したと思うし,今後にも有利になるしメリットだと思っています(ID19)」というように,経験を今後に生かしていきたいという点を両者共通して挙げていた。
伊藤(2007)は自己志向的動機と他者志向的動機の両方の要素をもつ人がいることを指摘している。他者評価を気にしていないが他者志向的動機が高く,他者志向的ではあるが,そのような行動が「自律的」になされている人を「自律的他者志向的動機群」としている。他にも,他者評価に対する関心が高い点で互恵的他者志向動機群と類似しているが,他者志向的動機は低く自己志向的動機を最も重視し,他者からの評価を意識しながら自己志向的であろうとしている人を「葛藤的自己志向的動機群」としている(伊藤,2007)。
以上のように,個人目標とチーム目標の2つから,さらに自分を動機づける要因を「自己」に含まれる要因と「他者」と関連する要因と,両者が同時に同じ協力者から語られる場合も存在した。例えば,「努力とは自分との闘い」「自分を律する」「他のことを断ち切って頑張る」(ID2)というように,課題遂行において自己との葛藤の重要さを強調している協力者が,同時に友達や母親の援助に対して感謝の気持ちを語っている。この他にも,自分を動機づける際に重要なこととして,両者が同時に語られるケースは少なくなかった。本研究では,他者の支えや励ましが成果につながらなかった努力経験において,目標とその努力を動機づける要因として重要視されていることが確認された。他者の支えや励ましの重要さは,自己志向的に動機づけられている目標では,他者からの援助やサポートの存在が達成課題への動機づけを高めることが考えられる。目標に対して自律的に努力していることに対して,他者が側面から支援することになる。他者志向的動機に動機づけられている目標では,他者の願いや期待を内在化しそれ自体を目標として努力していくことが考えられる。また,他者からの支えや励ましに対して感謝し,それに応えようとして努力すると考えられる。
3-3成果につながらなかった努力経験に携わった人物について
携わった人物の関わりについて,内容の類似性に基づいて,問題解決に関わる「道具的なサポート」と精神的に関わる「情緒的サポート」「もし携わった人がいなかった場合に与える影響」の3つのカテゴリーに分類した。
「道具的なサポート」では,勉強を教えてもらう(ID3),部活動で指導してもらう(ID8),一緒に練習する(ID5),怪我の治療をしてもらう(ID7)などの手段的な関わりが挙げられた。努力の方法を指導されたり,治療してもらったりなど,問題解決に関わりがあり,先生,先輩,友達,後輩が主に携わっていた。
「情緒的なサポート」では,心の支え(ID6),助けてもらう(ID18),モチベーションにして頑張る(ID6),何も口出しされなくてありがたかった(ID3)など,努力をするための精神的な関わりが挙げられた。友達,親が主に携わり,協力者の回答内容から,道具的なサポートよりも情緒的なサポートについての回答の方が重要視されている傾向にあったと考えられる。
また,「携わった人がもしいなかったら,その努力経験に影響はあるか。」というインタビュー項目に対しては,19名の協力者全員が,影響があると回答した。「いなかったら大きな影響の要因」では,そもそも努力しようと思わなかった(ID16),途中であきらめていた(ID17)などを挙げ,携わった人が成果につながらなかった努力経験に大きく関わっていることが示唆された。
3-4成果につながらなかった過去の努力経験をどう捉えているか
成果につながらなかった過去の努力経験が,ポジティブな経験かネガティブな経験かという問いについては,ポジティブな経験が17名,ネガティブな経験が1名,ポジティブな経験とネガティブな経験の両方と回答した人が1名であり,大学生は成果につながらなかった努力経験をポジティブな経験と捉えている傾向にあることが明らかになった。
成果につながらなかった過去の努力経験を具体的にどのように捉えているかについては,類似性に基づいて,回答を「経験としての認識」「肯定的な認識」「否定的な認識」の3つのカテゴリーに分類した。
「経験としての認識」では,「選択をして,間違っていなかったって思えるほど,自分の人生の中で大きな経験だし,新しいことに挑戦して良かったなと思います(ID9)」「この経験を活かしていかないといけないと思っています。この経験を生かさないと意味がないのかなと思っています(ID10)」「自分が1番力を注いだからっていうのもありますし,自分だけのものじゃなくてみんなと協力して頑張ったから良かったです。チームスポーツは1人じゃ無理だから,自分のためだけじゃなくみんなのために頑張るっていうのも,それが1番あらわれたのではないかなと思っています(ID1)」というように,努力経験を「経験」として認識し,肯定的に努力経験を捉えている傾向にあったと考えられる。
「肯定的な認識」では,「やりきった感があったので,終わった直後から,ずっとやって良かったと思っていました(ID3)」「結果は失敗しましたが,その間で頑張っていた期間があるので,失敗したとはいえ必ず報われるものでなくても価値はあったと思います(ID4)」「努力を継続することは,励ましてくれる人がいたからできたと思っています(ID5)」というように,努力経験を肯定的に捉えている傾向にあったと考えられる。
「否定的な認識」では,「結果が出るために努力するわけであって,結局今話した経験は結果が出なかった,結果に現れなかったっていう部分が残念だと思います(ID1)」「自分の中でマックスに努力出来なかったことが,ネガティブな思い出としてずっとあります(ID2)」「努力の仕方は少しあると思います。もっと,努力の量じゃなくて努力の質の部分で,こういう方法をしていたけれど,他にこういうことをやっていればもっとうまくいったのかもしれないと思うことはあります(ID8)」というように,努力経験の否定的な側面もあったと考えられる。
成果につながらなかった過去の努力経験の捉え方について,努力経験にどんな価値を見出すかという点に着目して考察した。「経験としての認識」と「肯定的な認識」を持つ人は,「勉強の仕方自体が自分の経験とか財産になった(ID2)」「頑張っていた期間があるので,失敗したとは言え必ず報われるものでなくても価値はあった(ID4)」「やりきったことに意味がある。(ID7)」「努力している人のほうが,努力っていうか必死になって物事に取り組んでいる人の方が,人生が豊かになりそうだと思う(ID6)」というように,努力した過程に対して,結果に現れると現れないにかかわらず,価値や自分への財産,意味を見出し,努力経験を肯定的に捉えている傾向にあった。それに対して,「否定的な認識」を持つ人は,「結果が良くなかったから,不完全燃焼な,やりきれなかった気持ちがあった(ID14)」「もっと違う方法だったら成功できたかもしれない(ID6)」というように,結果を出すことや目標を達成することを大きく捉えている。また,努力経験の質や量を振り返り,もっと努力できたと考え,成功する姿や成功している理想像になるためには何が足りなかったのかに着目し,後悔する気持ちから,努力経験を否定的に捉えている傾向にあった。
よって,成果につながらなかった過去の努力経験は,ポジティブな経験と回答した人が17名,ネガティブな経験と回答した人が1名,ポジティブな経験とネガティブな経験の両方と回答した人が1名であり,大学生は成果につながらなかった努力経験をポジティブな経験と捉えている傾向にあることが明らかになった。ポジティブな経験と回答した人は,努力した過程に対して,結果に現れると現れないにかかわらず,価値や自分への財産,意味を見出し,努力経験を肯定的に捉えている傾向にあった。ネガティブな経験と回答した人は,結果を出すことや目標を達成することを大きく捉え,努力経験の質や量を振り返り,成功する姿や成功している理想像になるためには何が足りなかったのかに着目し,後悔する気持ちから,努力経験を否定的に捉えている傾向にあった。
しかし,ID14は,「ポジティブにした方が,自分にとってプラスじゃないかなと考えたのでポジティブな経験にした」と回答し,その理由として「(この経験で)必要な知識を学んだ。それ以外にも,全然自分がまだまだできないっていうことに改めて気づくことができたので,自分を知ることができて,次に繋がる経験だったと思えているのでポジティブな経験と捉えている」と回答しているため,ネガティブな経験の側面があったとしても,ポジティブな経験と捉えることでその経験自体を正当化しようとしているようにも思える回答をあげていた。また,ID12は,ポジティブな経験とネガティブな経験の両方の側面があると回答し,その理由として,自己のためには成長することができたからポジティブな経験であるが,他者のためには結果的に上手くいかなかった経験のため,ネガティブな経験であると回答していた。ID12は,1つの努力経験に,ポジティブな経験とネガティブな経験の両方の側面があることを回答にあげていた。
以上の内容から,協力者は成果につながらなかった過去の努力経験を,ポジティブな経験と捉えている傾向にあったと考えられる。そして,ポジティブな経験と捉えていてもネガティブな経験の側面を併せ持っている場合や,反対に,ネガティブな経験と捉えていてもポジティブな経験の側面を併せ持っている場合,あるいは,ポジティブな経験とネガティブな経験の両方の側面を同じ程度併せ持っている場合があることが明らかになった。努力対象や努力する内容,努力の困難さによって,個人の努力経験の捉え方に大きく関連している傾向にあったと考えられる。
3-5 努力観(十答法)の中で一番初めの回答をあげた理由について
十答法の回答に対し「努力観の中で,一番初めの回答をあげた理由」を問う質問を行った。回答結果を内容の類似性に基づいて,「イメージがあったから(ID13)」「継続する=努力だと思った(ID8)」というような回答から,努力そのもののイメージを回答しているものを,『イメージ』,「努力は続けていく上で意味がある(ID1)」「一番大切だから(ID3)」「私の中で大事にしている(ID17)」というような回答から,努力をする際に協力者が大切に思っているものを,『大切にしていること』(以下,大切と略記),「目標のために部活を(実際に)頑張っていたのから(ID9)」「担任先生によく言われていたから(ID4)」というような回答から,協力者が実際に体験した経験から連想して回答しているものを,『経験から連想』(以下,経験と略記)の3つのカテゴリーに分類した。(Table5)また,「就職活動で得たものや考えたことを参考にして考えた(ID13)」「部活のことも思い出しながら今までの経験も思い出しながら考えた(ID15)」というように,成果につながらなかった努力経験から努力観が構成されている傾向もあったと考えられる。
本研究で構成されたカテゴリーは,「努力観の中で,一番初めの回答をあげた理由」を問う質問を行い,その回答から類似性に基づいてカテゴリーに分類した。そのため,ID12は,アルバイトの経験から連想したためカテゴリーは『経験』であるが,「ひとりひとりが頑張って出来ることが人それぞれであると念頭において、自分の考えを押しつけないようにしようと接しているので、大切だと思った」という回答をあげたように,努力をする際に協力者が大切に思っているものでもあるため『大切』のカテゴリーにも当てはまる回答であった。また,ID3は,「ずっと続けて頑張ることが一番大切だから」という回答をしたためカテゴリーは『大切』であるが,成果につながらなかった努力経験の回答で,努力した過程について,「長い間勉強を頑張った(=継続して勉強を頑張った)ということが自分の中に残っている」という回答をあげたように,『経験』から努力をする際に大切に思っているものへと大きく関連しているようにも考えられた。ID8も,「継続する=努力だと思った(ID8)」という回答をしたためカテゴリーは『イメージ』であるが,成果につながらなかった努力経験の回答で,部活動の努力経験について,「練習とかも辛いものではあるからそれを毎日コツコツ続けていた経験だった」という回答をあげたように,『経験』から努力そのもののイメージを回答しているものへと大きく関連しているようにも考えられた。このように,「努力観の中で,一番初めの回答をあげた理由」は,『イメージ』『大切』『経験』の相互が関連しあい,形成されたカテゴリーであると考えられる。
また,努力観(十答法全て)を記述する際に,ID15は,「部活の時に実感した(ことを元に記述した)。しっかり次につながっていて,経験が今に生かされていると思う」と回答した。ID18は,「十個考えた時は受験の経験も連想しながら考えた」「諦めないで頑張ることは繋がっているし受験の経験も活かしていきたいと思っている」と回答した。成果につながらなかった努力経験を次に生かしていきたいと捉える人は,その経験が今個人の持つ努力観の形成につながり,成果につながらなかった努力経験自体にも価値を見出し,肯定的に捉えている傾向にあることが示唆された。
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