努力観と特性的自己効力感について
努力する過程に価値があると日常的に認知することによって,成果の有無にかかわらず,日々行う努力に専念ができるため,何事にも積極的に努力できる力を持ち,努力することを肯定的に捉えることができるのではないだろうか。努力することを肯定的に捉えることの一つに,自己効力感がある。自己効力感とは,「ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまくできるか」という個人の確信のことである(バンデューラ,1977)。そのため本研究では,努力観の中で,一番初めの回答をあげた理由の,『イメージ』『大切』『経験』の3つのカテゴリーごとの協力者を比較し,特性的自己効力感との関連を確認するために,カテゴリーごとの特性的自己効力感尺度得点の平均値を算出し,特性的自己効力感尺度得点に関して一元配置分散分析を行い,自己効力感の高さと努力観の関連を検討する。
特性的自己効力感尺度について,得点が高いほど自己効力感の程度が大きくなるよう,成田(1995)に従い逆転項目を逆転させて23項目の評定値を加算し,合計点を項目数で除し特性的自己効力感尺度得点を算出した。特性的自己効力感尺度23項目全項目を対象として信頼性の検討を行った。Cronbachのα 係数により検討した結果,特性的自己効力感尺度のα係数は0.75の値を示した。
努力観の中で,一番初めの回答をあげた理由の,『イメージ』『大切』『経験』の3つのカテゴリーは,相互が関連しあい形成されたカテゴリーであると考えられるが,カテゴリーごとの協力者を比較し,協力者が持つ自己効力感において,関連があるのか検討することができると考えた。『イメージ』『大切』『経験』の3つのカテゴリーと特性的自己効力感との関連を確認するために,カテゴリーごとの特性的自己効力感尺度得点の平均値を算出し,特性的自己効力感尺度得点に関して一元配置分散分析を行ったところ,主効果が有意だった( F (2,16) = 5.99 ,p < .05 )。テューキーのHSD法による多重比較の結果,『イメージ』と『大切』の間において,『イメージ』が『大切』より平均値が高く,『経験』と『大切』の間において,『経験』が『大切』より平均値が高く,有意差(5%水準)がみられた。
本研究の結果から,努力観が『イメージ』から形成されている人は,努力観が『大切』から形成されている人よりも自己効力感が高いことが明らかになった。また,努力観が『経験』から形成されている人は,努力観が『大切』から形成されている人よりも自己効力感が高いことが明らかになった。
自己効力感とは,「ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまくできるか」という個人の確信のことである(バンデューラ,1977)。努力観が『イメージ』から形成されている人は,努力観が『大切』から形成されている人よりも、「努力はどのようなものか」というイメージが先行して努力観が構築されているため,達成行動においても,どの程度「うまくできるか」ということを想定でき,自己効力感が高くなった可能性がある。また,努力観が『経験』から形成されている人は,これまでの経験から「努力とはどのようなものか」ということが,連想できて努力観が構築されているため,努力観が『大切』から形成されている人より,達成行動においても,どの程度「うまくできるか」ということを経験から想定でき,自己効力感が高くなった可能性がある。個人の持つ努力観が何から形成され,どのくらい具体的に努力観が構築されているかによって,自己効力感との関連がより大きくなるのではないかと考えられる。
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