4.コミュニケーションにおける満足感


三澤(2009)は、小集団においてメンバー内に情報量の均衡・不均衡がある場合のコミュニケーションについて研究を行っている。集団内の各メンバーが持っている情報量が均衡している状態では、メンバーの発言数や会話のトピック数が多く産出されやすいのに対し、情報量が不均衡な状態では、メンバーが自由に発言することが難しく、発言数やトピック数が減少する。つまり、各メンバーが持っている情報量がメンバーの間で不均衡な状態は、コミュニケーションの制限が引き起こされることが明らかにされた。

そういう意味では、wheel型のコミュニケーション構造では、中心的位置にいるメンバーに必然的に情報が集まるような形態になっており、中心的位置を占めるメンバーと周辺的位置を占めるメンバーとの間で情報量の不均衡が存在しやすくなっている。その結果、コミュニケーションが制限され、集団のコミュニケーションへの満足感に影響を与えることが予想できる。

また、フォーマルグループとインフォーマルグループでは、グループを作る目的やコミュニケーションのあり方が違う。そのため、組織的な側面が強く、業務上あるいは事務的な情報のやり取りが多いと考えられるフォーマルグループと、友人関係的な側面が強く、雑談や日常会話的なやりとりが多いと予想されるインフォーマルグループとでは、満足感を感じる場面や要素も異なると考えられる。すなわち、集団の満足度といっても同じ性質を持った満足度ではなく、集団の特質に応じた満足度というものがあると考えられる。その点について次のような観点から検討する。


4-1.組織内コミュニケーションの満足度

組織運営上の満足度について、Downs & Hazen(1977)は、組織コミュニケーションの満足度を測定する尺度である「The Communication Satisfaction Questionnaire」(以下CSQ)を作成している。CSQでは組織内コミュニケーションに対する8つの影響要因を提示している。『コミュニケーション風土』、『上司とのコミュニケーション満足度』、『自分の職場に関する情報満足度』、『メディアの品質満足度』、『同僚コミュニケーション』、『自社に関する情報満足度』、『部下とのコミュニケーション満足度』、『自分の評価についてのフィードバック満足度』の8つである。職場でのコミュニケーションでは、自分がどう評価されているかについてのフィードバックや、上司や部下とのコミュニケーションが円滑に行えているかなどが満足度の重要な要因になっている。


4-2.友人関係における満足感

姜・南(2014)は、どのようなときに友人関係についての満足感を得られるのかについて検討し、友人関係満足に関する尺度を作成している。友人関係における満足感に影響する5つの要因を提示している。コミュニケーションが円滑に行え、一緒にいることで楽しさを感じる『意思疎通満足』、互いをありのまま受け入れ、理解しあえていると感じる『相互的受容・理解満足』、他者が自分のことを他の他者よりも優先してくれていると感じる『自己優先満足』、互いに礼儀をわきまえ、相手に配慮していると感じる『関係距離満足』、自分を犠牲にしても、他者との関係を維持しようとする『関係維持満足』の5つを挙げている。友人関係においては、互いをありのまま受け入れ認めあうことや、相手に思いやりを持って接すること、コミュニケーションが円滑に行え、それにより楽しさなどの感情共有をスムーズに行えるといったことが満足感に影響している。



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