方法
1.調査対象
大学生63名を対象に,質問紙調査を実施した。回答のうち,回答に不備のある者を除き,すべての実験に参加した計43名(男性15名,女性28名)を分析対象とした。
2.調査時期
2021年11月中旬~11月下旬
3.手続き
質問紙による調査を行った。質問紙は大学の対面またはオンラインでの講義時間に一斉に配布をし,回答を求めた。また,SNS上で回答者を募集し,回収した。
4.質問紙の構成
質問紙は4つの尺度と,アンガーマネジメントプログラムであるセルフプロセスレコードとロールレタリングによって構成された。また,フェイスシートで学部,学年,学籍番号の下3桁,性別について尋ね,本研究の調査に協力することへの同意を求めた。
4-1.随伴性自尊感情に関する項目
セルフプロセスレコードとロールレタリング実施前と実施後で自尊感情を維持することが出来ているかを測定するために,Paradise&Kernis(1999)のContingent Self-Esteem Scaleを伊藤・小玉(2006)が日本語に翻訳した自己価値の随伴性尺度を用いて随伴性自尊感情を測定した。「次の項目について、あなたに最もあてはまるものを選んでください」という教示文を示し,回答を求めた。本尺度の全15項目について回答者がどの程度あてはまるのか「あてはまらない」から「あてはまる」の5件法で測定した。
4-2.本来感に関する項目
セルフプロセスレコードとロールレタリング実施前と実施後で自尊感情を維持することが出来ているかを測定するために,個人が自分らしくあると感じている全般的な感覚を測定する伊藤・小玉(2005)の本来感尺度を用いた。「次の項目について最もあてはまるものを選んでください」という教示文を示し,回答を求めた。本尺度の全7項目について,回答者がどの程度あてはまるのか「あてはまらない」から「あてはまる」の5件法で測定した。
4-3.怒り感情を表出しない傾向に関する項目
Spilberger(1988)によって作成された怒りの心理尺度STAXI(State-Trait Anger Expression Inventory)を,1994年に鈴木・春木が翻訳した日本語版怒り心理尺度STAXIを用いた。「次の項目を読み、あなたが普段怒ったり腹を立てたりした時の振る舞い方についてあてはまるものを選んで下さい」という教示文を示し,回答を求めた。本尺度は「怒りの表出」「怒りの抑制」「怒りの制御」の3下位尺度から構成されており,そのうちの「怒りの抑制」と「怒りの制御」の2つの下位尺度の全15項目について「全くあてはまらない」から「とてもよくあてはまる」の4件法で測定した。
4-4.怒り感情に対する認識に関する項目
セルフプロセスレコードとロールレタリング実施前と実施後の怒り感情に対する認識の変化を測定するため,奥村(2008)の情動への評価尺度(怒り)を用いた。「次の項目を読み、あなたの怒り感情に対する考えについて、1点(全くあてはまらない)~6点(非常にあてはまる)のうちあてはまるものを選んでください」という教示文を示し,回答を求めた。本尺度は「他者懸念」「必要性」「負担感」の3下位尺度から構成されており,全22項目について,「全くあてはまらない」から「非常によくあてはまる」の6件法で測定した。
4-5.プロセスレコード
角田・上良(2018)による教師の自己省察のためのプロセスレコードを参考にし,個人が怒り感情を抱いた場面の振り返りにおいて使用出来るセルフプロセスレコードの作成を行った。本来は看護や教育現場で多く使用されるが,本研究では個人の対人場面で使用するため,まずどのような相手に対する怒り感情であるか,そしてどのような理由で怒り感情を抱いたかについての記述を追加した。相手との相互作用の過程を記述する項目については「相手の言葉や行動」「私が考えたこと」「私の言葉や行動」を相互作用の過程に沿って記述するよう求め,その後「上の表を書いてみて気づいたこと」を記述するよう求めた。セルフプロセスレコードを行うにあたり,「この一週間で、『身近な人や親しい人、信頼している人(例:友人、家族、恋人、先輩、後輩など)に対してあなたが怒ったことやイライラしたこと』1つを次のワークシートに記録してください。この1週間でイライラしたことがなかった場合、身近な人や親しい人、信頼している人に対して大学生活の中で怒ったことやイライラしたことについて印象に残っていることを記録してください。全部書けないときは書けるところだけでも結構です。枠が足りない時はページを超えて書いてもらって構いません。」という教示文を示し,回答を求めた。
4-6.ロールレタリング
セルフプロセスレコードで記述を行い振り返った場面の相手に対して,自分の気持ちや考えなど、伝えたいことを手紙に書くよう教示文を示しロールレタリングを行うことを求めた。往信の記述後,相手に手紙が届いた場合,自分へどのような返事を書くのかを想定し,その人から自分への返信をその人に成り代わって書くよう教示文を示しロールレタリングを行うよう求めた。自分から相手へ手紙を書く往信用の用紙と,相手から自分へ手紙を書く返信用の便箋を質問紙に追加しそこに手紙を書くよう求めた。往信と返信を書いたのちに手紙を書いてみた感想と書いてみてどのような気持ちになったかについての記述を求めた。
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