1.はじめに
近年,多くの大学生は何らかのストレスを感じており,精神的な理由から休学や退学を行う学生もみられる。国立大学保健管理施設協議会(2019)「学生の健康白書」によると大学生の4割強が何らかの不安を感じていることが多く,学年が進むにつれて精神的健康についての相談が多くされていたという。石田・前田・品川・兒玉・岡本・松下・大塚(2008)によると,大学生が半年間に経験していたストレッサーの中でも特に大きなものは,「将来の職業について考えるようになった」,「自分の性格について考えるようになった」であったと述べている。このように,大学生は様々なストレスに苛まれながらも自分の力で課題や講義,就職活動に取り組まなければならず,近年ではさらにコロナ禍ということもあり経済的な負担が増えたり,ストレスを発散できる機会が減少し,より大学生活にストレスを感じている人が多いのではないだろうか。
そのような状況の中,様々なストレスを乗り越える力として近年注目されているのが,レジリエンス(resilience)という力である。レジリエンスは「困難で脅威的な状態にさらされることで一時的に心理的不健康の状態に陥っても,それを乗り越え,精神的病理を示さず,よく適応している」(小塩・中谷・金子・長峰,2002)状態であると定義されている。このことから,レジリエンスを高めることで,避けることができないストレスのかかる状況下でも耐えしのぎ,前へ進むことができると考えられる。
本研究ではレジリエンスを向上させる要因について家庭環境の視点から考察していく。
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