3.本研究の目的


 ここまでの議論の通り,「かわいい」感情には脅威を感じず,対象に近づいてみたいと思う接近動機付けが伴い,「かわいい」ものを見ると,話し合いにおいて笑顔や発話などが増加することが明らかにされている。 近年,非対面でのコミュニケーション機会が増えた。しかし,対面と比較すると冷たい印象に感じたり,緊張感や喋りにくさを伴うなどの課題が挙げられるため,「かわいい」感情による,非対面でのコミュニケーションにおける満足感や笑顔,発話回数などへの影響について検討する。

 大学生,大学院生を対象とする初対面の同性3名を1組とし,動画と音声の通信によるオンライン会議システムで話し合いを行い,「かわいい」という感情が非対面でのコミュニケーションにどのような影響を与えるのかを明らかにする。 本研究で扱う「かわいい」は,人やモノの属性ではなく,人やモノに接したときの自身の中で生じる心の感情とし,「かわいい」と感じる画像をみることで「かわいい」感情を喚起する。

 話し合いの後の質問紙では,意思疎通がどの程度うまくいっていると感じたのか,会話中にどのような感情状態であったか,会話の満足感の程度を尋ねる。「かわいい」感情には性別による違いが見られるため,性別の検討も行う。ふるまいの検討では,話し合いの様子から笑顔表出回数,笑顔表出時間,相槌,発話回数,発話時間を測定し,「かわいい」画像を見た話し合いと,「かわいい」画像を見ない場合の話し合いでの違いを検討する。



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