2. コミュニケーションの形態について


 近年は新型コロナウイルス流行の影響により,非対面でのコミュニケーションの機会が増えた。 非対面でのコミュニケーションでは外出自粛をしながら密にならずにコミュニケーションができるという利点がある。最近特に使用する機会が増えたビデオ通話機能を用いたコミュニケーションでは,電話やメールなどのコミュニケーションと比べるとリアルタイムで相手の様子を見ながら話せるという特徴があり,ほぼ対面に近い会話が可能である。しかし,あくまで画面上での会話のため,相手の視線の向きや雰囲気がつかみにくくなり,戸惑いややりづらさを感じるというデメリットもある。

 狩野・布井(2020)は直接対面での会話とビデオ機能通話(LINE)を用いた場合の会話を比較し,コミュニケーション評価の違いを検討した。その結果,ビデオ機能通話条件よりも対面条件の方が喋りやすく,快の感情になることに加え,会話自体にもポジティブな評価がなされることが分かった。さらに,ビデオ通話条件では対面条件よりも「冷たい感じのする会話だった」などの会話苦痛因子得点や「会話は緊張を伴うものだった」などのぎこちなさ因子得点が有意に高いことが明らかになった。

 また,オンライン会議とオフライン会議の意思疎通の比較を行った検討では,オンラインの方がオフラインの場合よりも発言頻度が低いことが明らかになった。意思疎通に関わる「会議の充実度」「自分の意思の伝達」「メンバーの意思の配慮」の3項目のアンケートの結果では,すべての項目においてオンライン会議の得点がオフライン会議の得点より低く,オンライン会議はオフライン会議に比べると意思疎通が難しいということが示唆されている(宮内・遠藤,2020)。

 このように,非対面でのコミュニケーションでは会話にネガティブな印象や緊張感を伴い,発言頻度が低くなるなどの課題が多い。

 そこで,「かわいい」感情が持つ,ポジティブな感情や脅威のなさが,非対面での会話に生じやすい冷たい印象や緊張感を軽減することにつながるのではないだろうか。

 さらに,「かわいい」感情による発話を増やす効果によって,非対面での会話でも喋りやすさを高め,会話を活発にするのではないかと考える。



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