4.各下位尺度得点の差の検討


 4-1.SNS上の友人の有無×対面状況の友人関係スタイル×対面状況の友人への自己開示
 SNS上の友人の有無が対面状況の友人に対する自己開示の得点に影響するのか,対面状況の友人に対する同調性及び心理的距離が自己開示の質的側面に得点差を生じるのかを検討するため,SNS上の友人の有無,対面状況の友人に対する友人関係スタイル,自己開示4種類「人生・生きがい」「家族・生活」「人間関係」「社会的話題」を独立変数,対面状況の友人に対する自己開示の得点を従属変数として3要因分散分析を行った。なお,対面状況の友人に対する友人関係スタイルは,対面状況の友人に対する同調性(4〜16),対面状況の友人に対する心理的距離(4〜16)の各尺度得点の最低値と最高値をもとに10を基準に絶対的に高低に分け,それぞれの組み合わせから友人関係スタイルを「尊重群」「密着群」「孤立群」「表面群」の4つに分類した。(尊重群186名,密着群88名,孤立群18名,表面群12名)
 その結果,友人関係スタイルによる主効果,自己開示の種類による主効果がみられた (順にF(3,387)=15.006;p<.001,F(3,1161)= 33.257;p<.001)。その結果をTable13に示す。多重比較の結果,対面状況の友人に対する友人関係スタイルにおいて,心理的距離が近い友人関係である「尊重群」,「密着群」が,同調性が低く心理的距離の遠い「孤立群」よりも自己開示の得点が 0.1%水準で有意に高い結果が得られた(Table14)。
 また,自己開示の種類における多重比較の結果,内面性が高く最も他者に開示されやすい「人生・生きがい」が,「人生・生きがい」の次に内面性が高く他者に開示されにくいとされる「家族・生活」「人間関係」よりも対面状況の友人に対する自己開示の得点が0.1%水準で有意に高いという結果が得られた。また,「人生・生きがい」の次に内面性が高く他者に開示されにくいとされる「家族・生活」「人間関係」よりも,内面性の程度が低い「社会的話題」が対面状況の友人に対する自己開示の得点が0.1%水準で有意に高いという結果が得られた。内面性の程度が同程度の「人間関係」が,「家族・生活」よりも自己開示の得点が5%水準で有意に高いという結果が得られた(Table15)。
 友人関係スタイルと自己開示の種類の交互作用がみられた(F(9,1161)= 1.942;p<.05)。多重比較の結果,友人関係スタイルと「人生・生きがい」「家族・生活」「社会的話題」において,「尊重群」「密着群」が「孤立群」より0.1%水準で「人間関係」が1%水準で自己開示の得点が有意に高く,「人生・生きがい」において「密着群」が「表面群」より0.1%水準で自己開示の得点が有意に高く,「家族・生活」において「密着群」が「尊重群」より0.1%水準で自己開示の得点が有意に高いという結果が得られた。自己開示と「尊重群」「密着群」において「人生・生きがい」「社会的話題」が「家族・生活」「人間関係」より自己開示の得点が0.1%水準で有意に高く,「人間関係」が「家族・生活」より自己開示の得点が0.1%水準で有意に高いという結果が得られた。自己開示と「孤立群」において「人生・生きがい」「社会的話題」が「家族・生活」より5%水準で有意に自己開示の得点が高いという結果が得られた。なお,SNS上の友人の有無による主効果は見られなかった(Table16)
 仮説1は一部支持され,仮説2は支持されなかった。
  








4-2.SNS上の友人に対する友人関係スタイル×SNS上の友人に対する自己開示の2要因分散分析
 SNS上の友人において心理的距離の近い群では内面性の高い自己開示が行われ,同調性は影響しないのかを検討するためSNS上の友人に対する友人関係スタイル,自己開示4種類「人生・生きがい」「家族・生活」「人間関係」「社会的話題」を独立変数,SNS上の友人に対する自己開示の得点を従属変数として2要因分散分析を行った(Table17)。なお,対面状況の友人に対する友人関係スタイルと同様にSNS上の友人に対する友人関係スタイルは,SNS上の友人に対する同調性(4〜16),SNS上の友人に対する心理的距離(4〜16)の各尺度得点の最低値と最高値をもとに10を基準に絶対的に高低に分け,それぞれの組み合わせから友人関係スタイルを「尊重群」「密着群」「孤立群」「表面群」の4つに分類した。(尊重群44名,密着群21名,孤立群20名,表面群6名)
 その結果,友人関係スタイルによる主効果,自己開示の種類による主効果がみられた (順にF(3,87)=8.060;p<.001,F(9,261)= 24.043;p<.001)。多重比較の結果,SNS上の友人に対する友人関係スタイルにおいて,心理的距離が近い友人関係である「尊重群」,「密着群」が,同調性が低く心理的距離の遠い「孤立群」よりも自己開示の得点が 0.1%水準で有意に高い結果が得られた。また,同調性の高い「密着群」が同調性の低い「尊重群」より1%水準で有意に自己開示の得点が高かった(Table18)。
 また,自己開示の種類における多重比較の結果,内面性が高く最も他者に開示されやすい「人生・生きがい」が,「人生・生きがい」の次に内面性が高く最も他者に開示されにくいとされる「家族・生活」「人間関係」よりもSNS上の友人に対する自己開示の得点が0.1%水準で有意に高いという結果が得られた。
 また,「人生・生きがい」の次に内面性が高く最も他者に開示されにくいとされる「家族・生活」「人間関係」よりも,内面性の程度が低い「社会的話題」がSNS上の友人に対する自己開示の得点が0.1%水準で有意に高いという結果が得られた。「社会的話題」が「人生・生きがい」よりも5%水準で有意に自己開示の得点が高かった(Table19)。
 友人関係スタイルと自己開示の種類の交互作用がみられた(F(9,261)= 2.868;p<.01)。多重比較の結果,友人関係スタイルと「人生・生きがい」「家族・生活」「人間関係」において,「尊重群」「密着群」が「孤立群」より0.1%水準で「社会的話題」が5%水準で自己開示の得点が有意に高く,「人生・生きがい」「家族・生活」「人間関係」において「密着群」が「尊重群」より0.1%水準で自己開示の得点が有意に高いという結果が得られた。また,「家族・生活」において「尊重群」「孤立群」より「表面群」の方が0.1%水準で自己開示の得点が有意に高かった。自己開示と「尊重群」「密着群」において「人生・生きがい」「社会的話題」が「家族・生活」「人間関係」より自己開示の得点が0.1%水準で有意に高く,「尊重群」において「社会的話題」が「人生・生きがい」より自己開示の得点が0.1%水準で有意に高かった。さらに「孤立群」において「社会的話題」が「家族・生活」「人間関係」より自己開示の得点が0.1%水準で有意に高く,「人生・生きがい」が「人間関係」より0.1%水準で有意に高いという結果が得られた(Table20)。
 仮説3は一部支持された。
  








4-3.SNS上の友人ありの回答者における性別×自己開示の対象×自己開示の種類
 対面状況の友人には内面性の高い自己開示が行われ,SNS上の友人には内面性の低い自己開示が行われるのか,また性差はあるのかを検討するため,回答者の性別(男子,女子,回答しない),自己開示の対象(SNS上の友人,対面状況の友人),自己開示4種類「人生・生きがい」「家族・生活」「人間関係」「社会的話題」を独立変数,それぞれの対象への自己開示の得点を従属変数として3要因分散分析を行った(Table21)。その結果,自己開示の対象による主効果のみがみられた(F(3,264)= 24.514; p<.001)。多重比較の結果,「人生・生きがい」「社会的話題」が「家族・生活」「人間関係」より0.1%水準で有意に自己開示の得点が高いという結果が得られた(Table22)。
 また,性別と自己開示の対象の交互作用がみられた(F(2,88)= 5.649;p<.01)。男子は1%水準で,女子は0.1%水準でそれぞれ「SNS上の友人」より「対面状況の友人」の方が有意に自己開示の得点が高かった。SNS上の友人ありと回答した者においては性別による主効果は見られなかった(Table23)。 仮説4は支持されなかった。
  





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