9.仮説




仮説1 : D型の孤独感を持つ者は,A型の孤独感を持つ者よりも独立意識が高い.また,男性は女性よりも独立意識が高い.

 吉山(1992)はD型の孤独感を持つ者の特徴として,独立意識が高いことを挙げている.D型の孤独感を持つ者は,個別性を理解しており,自分と他人が違う人間であることや,自分の問題を自分で解決しなくてはならないことを理解しているため,独立意識が高まると考えられる.逆に,A型の孤独感を持つ者は個別性を理解できていないため,D型の孤独感を持つ者よりも独立意識が低いと考えられる.また性差に関して,加藤・高木(1980)は,女性より男性の方が独立意識が高いことを明らかにしている.女性と母親の情緒的結合が強いこと(高橋,1968),女性は年齢が上昇しても親への依存性の変化がなく高い状態を保つこと(今林・島田,1989),から女性は男性よりも親への依存性が高く独立意識も低いと考えられる.

仮説2 : 自己表現やメールでの交流のためにSNSを利用する者は,SNSに依存しやすい.そして,人間同士理解共感できると感じやすいが,個別性には気づきにくい.

 SNS依存者の最もよく利用する機能として「つぶやき機能」があることや(河井・天野・小笠原・橋本・小室・大野・堀川,2011),コミュニケーション志向がインターネット依存傾向と強く関連する(澤井・福岡,2018)ことから,自己表現やメールでの交流など,他者とコミュニケーションを取ることを目的としてSNSを利用する者はSNSに依存しやすいと考えられる.自己表現やメールでの交流を動機としてSNSを利用する者は,自分の感情や考えなどを他者と共有して,他者から「いいね」やコメント,チャットでの返信などの反応をもらうことができるため,自分のことを理解してもらえたと感じ,人間同士が理解・共感できると考えるだろう.その一方で,常に誰かと繋がっているという状況が生まれるため,自分と他者との境界が薄くなり,個別性には気づきにくいと考えられる.

仮説3 : SNSに依存する者は,独立意識が低い.

 神田・野田(2015)によると,携帯メールへの依存度が高い者は低い者よりも独立意識が低い.また,久保・坂田・清水(2015)によるとSNS依存度とアイデンティティ確立の程度に有意な負の相関が見られたこのことから,SNSに依存する者は,独立意識が低いと考えられる.

仮説4 : 知識増大のためにSNSを利用する者は,SNSに依存しにくく,独立意識も高い.

 知識増大を動機としてSNSを利用する場合,自分の得たい情報を得るために能動的に利用することができるため,気付かないうちに長い間SNSを利用してしまったり,やめようと思ってもやめられなかったりすることが起きにくいと考えられる.また,知識増大のために情報を集めることができる人は,自分の目的を達成するために努力することができるということであるため,独立意識が高いと考えられる.



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