1.はじめに


 「クラスのみんなが持っているから自分も欲しい」「友達と同じことがしたい」という内容は,子どもがよく口にすることだと言える。このように,私たちは幼少期から周りに認めてもらい,“仲間に入る”ために「周りと同じ」であることを求める。反対に,「他の誰もが持っていないものをみんなに見せたい」「変わったことをしてみんなから注目されたい」という考えを持つこともあるだろう。このように,中には目立って賞賛や注目を求め,あえて「周りと違う」ことを求める人もいる。また,必ずしも“目立つこと”を目的としていなくとも,「自分らしさ」を追求する一環として,例えば趣味や習い事に打ち込むことで周囲との差別化を図ることもあるだろう。このような「他には見られない,固有の性質」となるものを,uniqueness(ユニークネス)という言葉で表すことができるが,ユニークネスをどれくらい追求するかは人それぞれの異なると考えられるし,どのようなユニークネスの在り方を目指すかも人ぞれぞれと言える。
 
 例えば,ユニークネスはそれほど求めず,「ふつう」でありたいと思う理由としては周囲に認めてもらい,違った様子を見せて目立ちたくない(例えば,「逸脱者」として否定的に捉えられること)ことが挙げられる。一方で,前述のようにユニークでありたい理由として「目立ちたい」ということも考えられるが,特にそれは重視せず,単に自己のこだわりを追求してそれが「自分らしさ」の形成に貢献するという理由も考えられる。そのような意味では,ユニークネスを求める者の間でも考えの違いがあることが予想できる。

 また,どれだけユニークネスを求めるかは人それぞれであろう。そして,当然,ユニークネスを求めるような人物は年齢を問わず存在すると言える。例えば,持ち物や服装等の「珍しさ」や,何らかのこだわりを持っている者もいるし,進路選択においても特に「自分らしさ」を重視したり,周りと違ったことがしたいという考えに基づいていたりなどといった価値観や生き方におけるユニークネスを求める者もいるだろう。
 
 「ユニークネスを求める理由」においても個人差があることが予想できるが,共通して言えることは,ユニークネスを求める傾向が低い者よりも高い者の方が「個人で決める」「自分がやりたいことをする」「個性・長所を活かす(伸ばす)」といった意識が強いことが推測される。実際,例えば服装にこだわりを持つ者や,周囲とぶつかってしまいそうな際でも積極的に自分の意見を述べようとする者を思い浮かべた場合でも,彼らはそのような考えに基づいて行動していると考えられる。しかし,このような者の中でも,どの程度周りを気にかけるか,または周りにどれほど影響されるかということについての個人差はあると予想できる。他にも,自身の個性や長所はもちろん強調したい傾向はあるだろうが,他者の個性や長所と衝突してしまった場合にそれを受け容れられるか,自己の短所や周りと違うが故に現れる否定的に捉えられる違いを受け容れられるのかどうかも問題となる。このように,ユニークネスを求める人物を考えた時,ユニークネスかどうかということについて様々な側面においてその傾向を考えることができる。

 ところで,例に挙げたような「服装や持ち物」や「進路選択等の価値観・生き方に関すること」に対する意識は,世代や時代背景に影響されることである。現代で言えば“ダイバーシティ・多様性”・“個性を活かす”という言葉はよく耳にするものであり,幅広い年代によるSNS利用やネット上のコミュニティの形成により,より多様な流行や価値観に触れる機会も増える。同時に,そのような流行や価値観の変化もSNSの普及により多様になっているかもしれない。しかし数十年前まではインターネットもSNSもないわけで,テレビや紙媒体のメディアから情報を取得していたわけである。このようなことを考慮すると,ユニークネスを求める背景にある個人の考えにはある程度の内的な一貫性があるかもしれないが,「ユニークであること」に対する評価やその概念自体は時代と共に変化している可能性が考えられる。

そこで,本研究では,ユニークネス欲求を,その背景にある個人が持っている様々な考えや,ユニークネスを希求する個人の目的の在り方に基づいて,複数のパターンに分類することを試み,それぞれの性格特性の傾向をより明らかにすると共に,20世紀(主に1990年代)と21世紀(現在)の大学生とではユニークネスに関してどのような意識の変化があるかを明らかにすることを目的とする。



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