1.はじめに


 インターネット上の動画配信サービスは,われわれの日常生活のなかに十分に溶け込んでいる。動画配信サービスは,そのジャンルやカテゴリーも多岐にわたっており,現在では,あらゆる分野の動画の他に,映画やアニメのサブスク,テレビの見逃し配信といったテレビの延長サービス,利用者が手軽に発信するSNSの延長線のようなものまで,本当に何でもある状況である。

 ところで,動画のなかには,「動画配信者」がリアルタイムで発信するものがある。彼らは,ゲームや趣味のコンテンツを生放送で発信するパターンが多い。今回は特に生放送における「配信」活動に着目する。

 彼らの動画配信では,顔を公開していないケースも多く見受けられる。そのような顔が非公開である発信者に対しても,親近感を感じたことはないだろうか。たとえば,配信者の所謂「推し」である場合や,配信者のことが少し気になるというケースまで,配信者に対する親しさの感じ方は人それぞれだが,他のメディア(テレビやラジオ等)に出ている人々に比べて,動画配信の配信者に対しては,なぜか心理的距離が近く,親しい存在に捉えられる感じがある。動画配信の配信者は,顔も知らないし,個人的に知っているわけでもなく,もしすれ違っても気がつくことのできない相手であるのに,その相手に対して親近感を抱くのはどういうことなのだろうか。なぜ私たち視聴者は,話したこともない配信者に親しさを感じるのであろうか。また,そんな配信者の配信を視聴しようと考えるのであろうか。本稿では@視聴者は配信個人に親しみを抱いているか,Aどうして親しみを抱くのかということについて,配信者個人への親近感と視聴者同士のコミュニティへの視点などを交えて検討を行う。



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