2.動画配信サービスについて
2−1.現在の配信サービスの普及について
近年,私たちに身近なメディアの1つに動画配信サービスがある。その中でも一般人も発信することができるメディアである「YouTube」について言及していきたい。
YouTube上の動画の種類は多岐にわたり,情報提供だけでなく娯楽系のコンテンツも多い。特に,10年以上前から動画配信者・YouTuber(ユーチューバー)といった名称で呼ばれている人びとの認知度が高くなっている。彼らは各個人の趣味についての情報発信とそれに絡めた雑談やホームビデオのような日常の様子,その他の雑談,ゲームの実況といった各々の得意分野を活かした様々なコンテンツを発信している。彼らは配信・投稿したコンテンツと共に再生される広告の再生数により広告収入を稼いでいて,配信することを職業としている者も多い。人気のある動画の場合は,視聴者側として,多い場合は100万人以上の登録者がいる。最初は一般人から始めることが多いが,その手軽さや流行に乗り,近年は元々の人気を活かして有名人の活動の拠点の一つともなっている。高収入なのはほんの一握りの厳しい世界ではあるが,好きなことをしてファンに囲まれながら稼ぐ様子への憧れや,元一般人であることや視聴者との距離の近さからハードルを低く感じるのか,最近では小学生の憧れの職業ランキング上位になっている(株式会社クラレ2023)。
YouTube動画については,配信者はスマートフォンの普及により認知度が高まっていたが,動画を視聴する機会はどんどん増えており,コロナ禍の外出自粛による自由時間や在宅時間の増加で拍車がかかったと考えられる。(保・阿曽田2021)。その影響力からか近年は彼らのグッズを販売するだけでなく,漫画やテーマパークなど様々な商品とのコラボレーションをする企業もあり,それが宣伝効果を呼んでいる例もある。
2−2. 動画の配信者について
動画を配信する際,顔や個人情報を公開していない発信者も多く見受けられる。公開しない理由として,視聴者に対して,可愛いアイコンのキャラとして売り出す戦略としての一面も否定できないが,1番の理由は情報公開により,ストーカー被害・盗撮・本業への支障などのリスクが伴うことであると推測される。よって視聴者は,配信者の本名などの情報を知らない。勿論視聴者の大半は配信者と直接接したり,話したりしたこともないであろう。改行なし それにもかかわらず,視聴者は発信者に対して親しみを感じながら配信を視聴している。例えば,ワイテルズ1のグループのメンバーの1人であるNakamu(2022)も「自分たちの強みはゲームを楽しそうにプレイしているところであり,視聴者の人たちからは,『兄弟が友だちを家に連れてきて,ゲームをしているのを後ろから眺めている感覚になれる』とよく言われる」,と視聴者が親近感を感じているということを自覚している。そして,「自分たちの強みはゲームの最新情報を追うことではなく,マイクラ2を楽しそうにプレイしているところだと確信していました。」と述べている。
つまり配信者は,動画上での自らのトーク力,企画力はそれを形作る要因であり,その配信をしている自分自身こそがコンテンツであると捉えている点が重要である。実際,グッズの販売を例に挙げると,より好みの見た目であるキャラクターのグッズでなく配信者のグッズを選ぶのは「配信者の○○さん」であることが価値を上げているであろう。
2−3. 配信者と視聴者をつなぐ機能
視聴者においては,配信者とコミュニケーションができることも,その動画を視聴したり,コメントをしたりする目的に加わると考えられる。とくに発信者と視聴者が繋がる手段のうち,最も配信者に繋がり易いものが「コメント」の機能であるといえる。配信画面を開きながらリアルタイムで感想コメントを打ち込むことで,配信者がそれを見て視聴者に対して反応することもあるし,またそれを視聴者同士で見ることもできる。
とはいえサイト上でコメントを書き込む人は視聴者全体の一部である。for,Freelance株式会社(2022)では視聴者のうちコメントをするのは全体の2割というデータを出し,その他のサイトでもコメントをするのは少数派である。しかし一旦コメント書き込みを経験すると,その手軽さ故に1人がするコメント数は多く,人気のある配信者であれば膨大なコメントが流れる。
また,YouTubeなどの部の配信サービスには「スーパーチャット」という課金を伴うコメントも存在する。それを用いたコメントは課金額に応じた色付きの枠で目立つようになる。そういったコメント対して,配信者はそのコメントに反応する確率が上がったり,配信の終わりに配信者がスパチャを全て読み上げたりする。このようなシステムは,ネット動画配信における独特なものであり,返答1つに金銭が絡む特殊なコミュニケーションの形であるといえる。
金銭が絡む,絡まない,いずれにせよ,配信される動画のなかで,コメント機能を通して配信者と視聴者とのコミュニケーションが成立しており,配信者に対して何度もコメントを書き込む視聴者の存在が,その動画配信を支えているとも言える。
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