1.はじめに


 私たちは,学生の間,「宿題」や「課題」に多くの時間と労力を費やしてきた。家に帰って,おうちの人から「宿題やったの?」と口酸っぱく言われたり,「宿題を終わらせないと休み時間ないよ」などと担任の先生に厳しく言われたりした経験があり,宿題に良い印象がない人もいるだろう。そして,宿題や課題をどうにかして楽に簡単に終わらせたいと考えたことがある人も多いのではないだろうか。毎日の復習プリントを解いたり,新しく学習する漢字を練習ノートに書き写したり,テストで良い点数を取るためにワークを2周3周と繰り返し行ったりもしていたかもしれない。また,美術の授業などで制作する作品が授業中に完成しなかった場合,宿題として自宅に持ち帰って完成させることもあっただろう。このようにして,たくさんの子どもたちが宿題に向き合ってきたのである。近年では,なかなか宿題をしない子どもに宿題をさせるため,保護者へのサポートページやサポート方法が書かれた書籍が見られる。
 
 さらに,子どもたちのやる気を阻害する携帯電話やゲーム機に,使用制限を設定できるタイマーがついていたり,集中力アップの効果が見込まれるラーニングタイマーというグッズが発売されたりと,子どもたちの宿題や家庭学習を支援する活動が広まってきている。例えば,KOKUYOはいつもの鉛筆に取り付けるだけで,勉強への取り組み方を分析して見える化する「しゅくだいやる気ペン」というものを開発している。これを使って勉強することで,やる気ペンと連動したアプリに日々の努力が記録され,それが子どもたちのやる気を習慣化している。そうすることで,勉強に対して楽しみを見いだし,子どもたちをさらに書きたいという気持ちにさせることが期待されている。このように子どもたちの「勉強する」という行為が自然に強化されるためには,自らやる気を引き出すような学習の動機づけが重要であると考えられる。

 そして,夏休みなどの長期休暇に出される,大掛かりな宿題,例えば自由研究やポスター制作,読書感想文など,特に時間や労力がかかるものに対して,代行する企業・サービスも生まれている。株式会社「宿題代行Yattoku」は,作文や読書感想文を1文字8円(小学生料金)から作成しており,ホームページからは,実際に利用した人やその保護者からたくさんの喜びの声が届いている様子が示されている。
 
 これだけのサポート・サービスがあることから分かるように,子どもたちが自発的に,やる気を持って宿題に向き合うことは,ある程度難易度が高い。それは子どもたちだけでなく,それを見守る大人にとっても「宿題」は大変で手間がかかるものであることからも,困難な宿題に向き合っていくためには,子どもたちの「勉強が楽しい」,「勉強が面白い」といった気持ち,すなわち内発的な学習への動機づけが重要であると考えられる。



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