6.本研究の目的


6.本研究の目的

 これまでの検討から,宿題について,大切だと感じながらも困難なものであると認識されており,宿題実施時の学習動機づけが重要だと考えられてきた。その学習動機づけを捉える視点として,内発的な動機づけ,外発的な動機づけがある。また,友達に勝ちたいという競争心や良い成績をとりたいという優越的な動機づけ,遠い将来を考えた時の遂行目標に対する将来的な動機づけも重要であると考えられる。さらに,学習に効果的な環境を自身で作り出すことができるとされる自己効力感の重要性も示唆されている。そして,そういった動機づけや自己効力感によって,伴う学習行動,どのように学習を行うか,どのような工夫をしながら行うかも異なってくると考えられる。

 先行研究を踏まえると,内発的な動機づけを持っている者は,自身の満足のために学習を行い,内容を理解できる課題や知識を獲得できる課題に積極的に取り組むため,自分自身で答えに辿り着こうとする学習行動が見られ,自己効力感が高いと考えられる。また,宿題に計画を立てて取り組むことが予想され,行動統制的自己効力感が高くなると考えられる。一方で,外発的な動機づけを持っている者は,学習状況として何らかのストレスを伴っていると考えられ,自身の力ではなく誰かに聞くなど学業的援助要請を行うと考えられる。また,学年が上がるにつれて,宿題の大切さやその役割について理解するようになるため,宿題実施時に宿題を自身の力で行おうとする工夫が見られると考えられる。以上のことから,望ましい宿題の取り組み方とは,児童が内発性動機を高くもち,自身の力で調べようとする態度とそこで得た知識や経験から,高い自己効力感を得ることができるものであると考えられる。

 これらを踏まえて本研究では,どのような学習動機づけが,どのような児童の学習行動に影響を与えているのかについて検討する。また,その学習行動が,自身の「できる感」に影響を与えていると仮定し,学習動機づけと宿題実施時の工夫である学習行動との関連,児童が自発的に学習できるような「望ましい宿題への取り組み方」に注目し検討することを目的とする。「宿題」は,小学生から高校生までついて回る重要事項であるが,その中でも小学生は学習の初期段階であり,この先何年も続いていく学習活動への自発的な態度を養成していく過程にある。本研究では児童が自発的に学習できるような「望ましい宿題への取り組み方」について検討することから,対象を小学生とする。また学年によって,宿題の捉え方やどのような学習動機づけ,どのくらいの自己効力感を持っているかに違いがあると考えられるため,その学年差についても検討していくこととする。



back