考察


1. マスメディアやSNSの利用,自尊感情および痩身願望の性差について

 男性と女性において,マスメディアやSNSの利用,自尊感情および痩身願望に差があるのか検討した。その結果,SNSの影響・マスメディアの影響の下位尺度(「痩せるための情報への積極性」,「痩せることへのネガティブ感情」,「痩せることへのポジティブ感情」)の全てと,痩身願望において女性の得点が高いという結果となった。これらのことから,男性よりも女性の方が痩せるための情報や痩せている人への関心が高く,痩身願望が高いことが分かった。若年女性の痩せすぎによる健康問題の背景には,これらの結果が関わっていると考えられる。男性は筋肉質な身体を求められる傾向にある一方で,女性は痩身であることを求められる傾向にあることで,ダイエット特集などの痩せるための情報を積極的に見るため,このような結果になったと考えられる。また,SNSやマスメディア上の女性は外見を気にして過度に痩せていることが多く,その体型を理想とし,自分と比較してしまう傾向があることで,男性よりも女性の方がネガティブな感情やポジティブな感情を抱きやすいと考えられる。痩身願望について,成田・松田(2015)によると,男性よりも女性の方が高いことが示されており,本研究は先行研究を支持する結果となった。

 また,基本的自尊感情に関して性差はみられなかったが,社会的自尊感情は男性の方が高い結果となった。近藤(2010)は,社会的自尊感情を他者と比較した際に自分の方が優れているという優越性に基づく感情としている。本研究において,SNSやマスメディアの痩せるための情報や痩せている人を閲覧して影響を受ける女性の方が,社会的自尊感情が低いことが分かった。望月・近藤・宮森(2016)によると,小・中・高校生のいずれの学年においても,女子と比べて男子の方が,社会的自尊感情が高いことを示しており,本研究は先行研究を支持する結果となった。この背景として,望月ら(2016)は日本における社会的・文化的役割の性差による影響が考えられると述べている。



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