3. 自尊感情について
これまでの痩身願望に関する多くの研究で関連が示されてきたのが自尊感情である(馬場ら,2019;清原ら,2012;浦上ら,2007)。自尊感情という概念の提唱者であるJames(1892)は, 「自尊感情=成功/願望」という式で自尊感情の高さを表現しており, 分子に相当する成功・失敗の大きさによって, 自尊感情が上下する可能性を示唆している。Rosenberg(1965)は, 自尊感情を「自己に対する肯定的または否定的な態度」とし, 肯定的態度は, 「とてもよい(very good)」と「これでよい(good enough)」という2つの側面を持っていることを示唆している。このうち, 前者は他者と比較した際に自分の方が優れているという優越性に基づく感情であり, 「社会的自尊感情(Social Self-Esteem; SOSE)」とし, 後者は他者との比較に依拠せずに生じる自己受容の感情であり, 「基本的自尊感情(Basic Self-Esteem; BASE)」として概念化されている(近藤2010)。島・田添(2023)によると, SOSEは劣等感との負の関連, 自己愛(誇大性), 主観的幸福感との正の関連が見られ, BASEは劣等感, 自己愛(評価過敏性)との負の関連, 自己受容感, 自己愛(誇大性), 主観的幸福感との正の関連が見られたという。このことから, 自尊感情を2側面から捉えていく必要があると考えられる。
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