4. 痩身願望とマスメディアやSNSとの関連
ここまで示したように, 痩身願望に影響を与える内的要因に関する研究は多くされてきているが,情報化が進む現代では,マスメディアやSNSなどによる外的要因も大きく影響していると考えられる。令和3年通信利用動向調査(総務省, 2022)によると,20代のインターネット利用者は98.4%, SNS利用者は93.2%にも及んでおり,SNSの利用者は他の年代と比べて最も大きい割合となっている。また, 橋本・宮岡・鈴木・加茂(2018)は,SNSの使用状況, 食行動異常, ボディイメージとの関連について,女性摂食障害患者と一般女子大学生を比較検討した。その結果,患者群のほうがSNSで他人の写真の体型が気になると回答し,患者群の「自分が実際よりも太っている認知が高い群」は,ダイエット(体重を減らすこと)に関心があり,SNSではブログをより使っていたことを示している。さらに,やせや体型へのこだわりの強い摂食障害患者ほど, 食生活やダイエットに関する記事, 摂食障害患者の日記や闘病記などを読んでいる可能性が示唆されている。また,ファッション雑誌などのメディア媒体が女性にやせていることは素晴らしいと思うことを促進させ,自分の体型に不満を抱くことに関連することが分かっている(Field, Cheung, Wolf, Herzog, Gortmaker & Colditz, 1999; Russell, 1992)。前川(2005)は,テレビや雑誌でのダイエット特集への敏感さや, 紹介されたダイエット方法を試すという「メディアの影響」による体重・体型へのこだわりを示した。泉水・桑原(2022)によるSNS利用実態と精神的健康との関連に関する研究では, SNSの利用による悪性妬み(強いいらつきを含み, 優れた他者を傷つけることを目標とした行動を生じさせる)が強いストレス反応だけではなく, 自尊感情や主観的幸福感を低減させていることが分かっている。
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