1.はじめに


 近年,多くの人々が,痩身願望を有している.痩身願望とは「自己の体重を減少させたり,体型をスリム化しようとする欲求であり,絶食,薬物,エステなど様々なダイエット行動を動機づける心理的要因」と定義している(馬場・菅原2000).石田他(2016)は,調査対象者の25.5%がBMI18.5未満の痩身体型であり,痩身傾向にある中で,全体の91.0%が現在よりも痩せたいという願望を持っていると述べている.金田他(2004)も,高校生女子における「やせ願望」の実態を実体型別に検討した結果,実体型が「普通体重」であるにもかかわらず,8〜9割の女子で「やせ願望」を持つことを明らかにした.

 Our World in Data(2016)の,国別の肥満率では,日本は195ヵ国中164位であり,世界と比較して痩身傾向にあると云える.それにもかかわらず,間瀬他(2012)は日本の女性の九割が痩身願望を持っていることを明らかにした.これらのことから,日本では,自己の体型が肥満でないにもかかわらず,今より痩せることを望む人が多く存在するといえる.しかし,過剰な痩身願望を持つことで,人間の心身にもたらす様々な問題点が存在する.その例として,渡辺他(2002)は痩身願望などの心理的要因やダイエットをきっかけとして食行動の異常や心身の健康を損なう事例を報告している.



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