結果
1.分析に利用した有効回答について
全ての回答に不備がなかったため,そのすべての回答を有効とした。その結果,有効回答者計107名分(男性:82名,女性:23名,回答しない:2名)のデータを分析対象とした。
2.教師の理想像を推しの観点から測る尺度の因子分析と信頼性係数
教師の理想像を推しの観点から測る尺度について,本研究で扱った20項目から,1項目で測ったため,因子分析が不可能だった「先生のことは心の中でひそかに応援しているだけで,他人には言いたくない」の1項目を削った19項目を,探索的因子分析を行ったところ,尺度の元としたファン心理尺度における因子構造と異なっていたため,同じく19項目をファン心理尺度から抜粋した6因子の下位尺度通りにJASP0.19.1.0による確認的因子分析を行った(Table1)。元の尺度は,推しについて回答する項目で構成されているが,本研究では項目を教師について回答できるように構成し直している。また,元の尺度より,教員について回答するのが難しい因子,項目や,教師の内面性について回答できない因子,項目については除外している。その結果,適合度指標として,CFI=0.922,RMSEA=0.071,SRMR=0.086と十分な値となったためこのモデルを採用した。
第1因子,第2因子について,教師の理想像を推しの観点から測る尺度の元としたファン心理尺度の因子名を,教師に対応するように変更し,命名した。第3因子,第4因子,第5因子,第6因子についてはファン心理尺度の通りに命名した。第1因子を構成する項目は,教師に対してどれほど好意を持ち,応援したいと感じているかということに関する児童,生徒の自己認知であることから「教師への依存的な好意・育成の使命感」,第2因子を構成する項目は,理想の教師の授業を評価するものであることから「授業の評価」,第3因子を構成する項目は,教師を独占したいと考えているかということに関する児童,生徒の自己認知であることから「流行への反発」,第4因子を構成する項目は,教師に対して憧れや親近感を抱いているかということに関する評価であることから「人間性の評価」,第5因子を構成する項目は,教師と近しい間柄であると感じているかということに関する児童,生徒の自己認知であることから「疑似友人」,第6因子は,他の児童,生徒から,どれほど影響を受けているかということに関する,児童,生徒の自己認知であることから「流行への同調」とした。
各因子を構成する項目を足し合わせ,項目数でわり,尺度得点を算出した。そして,下位尺度ごとに平均値と標準偏差および信頼性係数としてα係数を求めた(Table2)。その結果,教師への依存的な好意・育成の使命感はα=0.747,授業の評価はα=0.838,流行への反発はα=0.722,人間性の評価はα=0.645,疑似友人はα=0.808と十分な信頼性が得られたため,この尺度構成を用いて分析を進めた。流行への同調はα=0.580と十分な信頼性は得られなかったが,重要な要素であるため,このまま用いて分析を進めた。
next→