5.本研究の目的


 先行研究において,様々な自己開示の機能あるいは効果が示されてきている。本研究では,自己開示と関連があると考えられる自己受容に着目する。先行研究では,自己受容の程度や自己開示の適切さや頻度へ与える影響を調査したものが多くみられ,自己開示が自己受容感に与える影響を調べたものは少ない。そのため,本研究では自己開示が自己受容に与える影響を検討していく。さらに,他者に受容されていると感じることで達成される自己受容が自己開示による影響を受けると考えられるため,聞き手の受容的反応・拒絶的反応も含めて検討していく。また,従来の自己開示度に関する研究の多くで性差がみられており,一般的に女性の方が男性よりも自己開示度が高いとされている。榎本(1990)は,男性は強く無口で自分の弱い面を表面に出さず,女性は多弁で感情的に不安定で自分の弱い面も出してしまうという社会通念をもとに自己開示の適切さが評価されることが,性差が生じる要因として考えられると述べている。そのため,男性と女性では自己開示の深さ,聞き手の反応,自己受容に関しても違いが見られると考える。また,自己開示の相手について,Jourard(1961)やRivenbark(1971)の報告より,青年期前期には両親,主に母親が自己開示の相手となっているのに対し,榎本(1987)の調査結果から青年期後期には男女ともに同性の友人への自己開示度が最も高くなることが示されている。そのため,本研究では調査の対象を友人への自己開示のみとした。そして,暮らし方について,大学生の中には下宿をしている人も多く見られる。家族と同居している人に比べ,下宿をしている人は,家族よりも友人との関わりが強くなるため,友人への自己開示や友人の反応から受ける影響も大きくなることが考えられる。また,友人が多い人は自己開示をする相手が多いため,受容的な反応を受ける機会も多くなることが予想される。そのため,自身の友人の数を多いと感じているか少なく感じているかによって,友人への自己開示度や自己受容に違いが見られると考えられる。 これを踏まえ,本研究では,大学生の友人への自己開示と聞き手の受容的・拒絶的反応の関連,さらにそれぞれが開示者の自己受容にどのように影響を与えるのか,性別,暮らし方,友人の多さの認知に着目して検討することを目的とする。 



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