4.自己開示と自己受容の関連


4. 自己開示と自己受容の関連

 高野・坂本・丹野(2012)の研究結果から,自己反芻の傾向が高い人は,自己受容ができておらず,不適切な自己開示を行いやすく,聞き手の拒否的な反応を引き出しやすいことが示唆された。一方で自己内省の傾向が高い人は,自己受容感が高く,肯定的な自己評価を行うため,適切な自己開示ができるものと考えられ,結果として聞き手の好意的な反応やサポートを引き出すと示されている。また,松本・小山(2009)によると,コラボレーション授業(科目名“自分を知ろう”)に参加した高校生の記述から,自己受容感の高い人は自己開示をスムーズに行っていることが示唆された。このように,自己受容から自己開示の適切さや頻度を検討した研究が多く見られる一方で,自己開示が自己受容に影響を与える可能性を示唆する研究も存在する。足立・外島(2024)は,ネガティブな出来事に関する筆記開示を行った後,受容的他者の視点に立ち出来事や自分自身を評価することで,1週間後の自己受容に改善が見られたことを報告した。実際に受容的な他者によって評価された場合にも同様の効果が得られるのではないかと考えられる。また,他者からの受容や理解が自己受容において重要な要素であることが従来の研究から示唆されているが,それに関連して,他者に受容されていると感じることについて,被受容感という概念がある。原澤(2017)は,被受容感を多くの場面で感じている人は自己受容が高いことが報告している。そして,城(2012)は,社会的自己の開示が,ソーシャルサポートの知覚を通して,被受容感を高めることを示した。このことから,自己開示が受容されることで他者に受け入れられていると言う感覚が高まり,自己受容も高めることができると考えられる。



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