3. 自己開示
3. 自己開示について
安藤(1986)は,「自分自身に関連する情報」を特定の他者に伝達することを自己開示としている。同じく安藤(1986)は,個人内過程における自己開示の機能として,「感情表出」,「自己明確化」,「社会的妥当化」の3つを挙げている。自己開示をすることで,聞き手の存在により自己を客観視しなければならない状況となるため,自分の意見や感情が明確なものになるというのが自己明確化であると述べられている。また,聞き手からのフィードバックや自己開示が促進されるため,他者との比較が効率的に行われ,自分の能力や意見の妥当性を評価され,自己概念が安定するが,そのような機能が社会的妥当化であると述べられている。
宮崎(2005)によると,自己開示研究を始めたJourard(1971)は心理臨床の実践の中で,日常生活における自己の開放性の重要さに着目し,自己開示は精神的健康を左右する鍵概念であるという前提に立ち研究を行ったという。自己開示と精神的健康の関連を検討する際に,自己開示に対する聞き手の反応に着目した研究も行われており,丸山・今川(2001)は対人関係の悩みについての自己開示がストレス低減に及ぼす影響について,聞き手の受容や開示後の聞き手の行動に着目して検討している。その結果,自己開示をすることおよび聞き手に受容されていると感じることがストレスを低減させることが示唆された。森脇他(2002b)は適切な自己開示が聞き手の受容的反応を促し,結果として抑うつが低下することを示している。また,聞き手の反応に加えて自己開示の深さを含めて検討した研究も行われており,清水・吉良(2023)は友人から受容的な反応を得られやすい人は,自己の否定的な性格に関する話など,深いレベルの自己開示を行い,受容的な反応が得られることで抑うつの低下が生じることを示した。一方で,深い自己開示を行ったものの受容的な反応が得られなかった場合,抑うつが悪化する可能性も示唆されている。これらのことから,自己開示に対する聞き手の反応によって,自己開示が精神的健康に与える影響は良いものにも悪いものにもなり得ると考えられる。そのため,本研究で扱う自己開示と自己受容の関連についても,自己開示の深さや聞き手の反応によって自己受容に対して異なる影響が見られるのではないかと考えられる。
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