6.本研究の目的
これまで,就職不安や進路探索行動についての研究は盛んにおこなわれているものの,どれも民間企業の志望者,内定者を対象にしたものがほとんどであり,教員志望者を対象とした研究はほとんどない.また,教育実習や現役の教師の話を聞く会など教員養成課程の学生に対して所属校から提供されている進路探索行動もあれば,公開教育研究会や教育ボランティア活動のように自主的に進路探索行動を行わなければならない場合もある.そのため教職志望者では一般的な就職不安と進路探索行動との関連は異なる可能性がある.本研究では,就職不安と進路選択に対する自己効力感が一般的な進路探索行動および教員養成課程に関わる進路探索行動に及ぼす影響について検討する.さらに,第二の目的として,就職不安が二つの進路探索行動に及ぼす影響について進路選択に対する自己効力感の高低によってどのように異なるのか検討する.第1の仮説として若松(2006)の研究から,目指す進路が決定している教職志望の学生は目指す進路が未決定の学生と比べて,進路探索行動が多いと考えられる.さらに,進路選択に対する自己効力感が進路探索行動に肯定的な影響を及ぼすことから,教職志望の学生の中で進路選択に対する自己効力感の高い者ほど一般的な進路探索行動と教員養成課程に関わる進路探索行動を活発に行うと予測する.第2の仮説として,赤田・若槻(2011)や古田・久尾(2007)の研究から,進路選択に対する自己効力感が高いほど教員になる就職不安の得点が低くなり,進路選択に対する自己効力感が低いほど,教員になる就職不安の得点が高くなると予測する.第3の仮説として森田(2014)の研究から,就職活動不安のうち,「活動継続不安」,「準備不足不安」については進路選択に対する自己効力感の高い者はそれらの不安が高いと情報収集行動が多い傾向にあることから,教員志望者においても進路選択に対する自己効力感が高く,「教員採用試験不安」が高いものは,進路探索行動のうち情報収集に関する探索行動を取りやすいと予測する.
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