5.進路探索行動と進路選択に対する自己効力感の関係について
教員採用試験を含む就職活動は大学生活中の大きなイベントにあたる.そこで大学生は自身の就職先を決定するために就職活動前に行う環境や自己に関する探索行動,つまり進路探索行動を行うことが必要とされる.Stumpf & Colarelli & Hartman (1983)によれば,進路探索行動とは,「前もって刺激されていない分野の職業や仕事,組織について情報を得るための行動および認知活動」と定義され,環境についての情報や自己についての情報の2側面から構成されている.それらは環境探索行動と自己探索行動の2つであり,環境探索行動は職業世界に対する情報収集行動であり,自己探索行動は自身と職業を関連付け,自身についてじっくり考える活動とされる.そして,この進路探索行動は進路選択に対する自己効力感と関係があり,多くの研究で,進路選択に対する自己効力感が高いと進路探索行動が促進されることが分かっている(安達,2001;富永,2000;浦上,1996).例えば,安達(2008)の研究では,進路選択に対する自己効力感は進路探索行動に対して肯定的な影響を及ぼしており,活動を遂行できたという有能感を高めることは進路探索活動を計画・実行する意図を促進させることが示唆された.また,就職不安と進路探索行動との関連について,それらを扱った研究は少ないものの森田(2014)の研究では,進路探索行動に影響する情報収集行動は就職活動不安のうちのアピールの不安が高い者が行いやすいという結果がある.さらに,上田・猪原(2017)の研究では,個人が感じた思考や感情などを悪いものととらえ,それらを感じないようにしたり,排除したり,逃れようとする試み(松本・大河内,2010)である体験の回避傾向が高い者の場合,就職不安の高さが進路探索行動を促進することが示されている.
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