4.教職の不安について
ここまで,一般的な就職活動の不安の研究を見てきたが,教員志望の不安とはどんなものがあるのだろうか.例えば,教育実習不安や教科指導に関する不安がある.教育実習不安は「授業実践力」,「児童・生徒関係」,「体調」,「身だしなみ」の4つからなり,教育実習後にそれらの不安が低下することが報告されている(大野木・宮川,1996).この教育実習不安は教員志望度が低いと高まり,男性は教育実習不安の影響をあまり受けず,男性,女性も教育実習により教師としての自信を示す教師効力感が高まることが示されている(西田,2008).また,前原・平田・小林(2007)は実習不安の高かった者ほど「体調」に関するストレスが高かったこと示した.さらに,「うまく授業をすることができず取り乱すことがあった」,「授業中に予想外の質問が出て困ることがあった」のような教師行動の柔軟性に関するストレスは実習不安のうち「授業実践」,「身だしなみ」,「子どもとの関係」と正の関連を示し,子どもたちが自分の授業をきちんと理解してくれるか心配したりどのような服装をしていけばよいのか心配したり,子どもにばかにされるのではないかと不安に思ったり,などの不安を実習前に強く抱いていた者ほど,実習中,授業で取り乱す傾向があったことを報告している.教科指導の不安の研究として松宮(2013)の研究が挙げられる.松宮(2013)は英語の授業指導の不安に影響を及ぼす要因として英語指導力に対する不安と授業設計に対する不安などを見出した一方,異文化に対する不安,英語学習に対するネガティブな経験は英語の授業指導の不安に直接的な影響を及ぼしていないことを発見した.このことから,外国語活動の指導に求められる教育内容(英語)にかかわる担当者の知識・理解を系統的・重点的に教育するカリキュラムを開発することが求められ,英語そのものに対する知識・理解の底上げや英語の教え方や英語の何を教えるのかに関わる研修との両立をすることができるカリキュラムの作成が急務であるとしている.2つの先行研究から,教科指導に関する不安や教育実習不安の研究はあるものの教職志望者を対象とした就職不安の研究は多くないことが分かる.
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