1.はじめに


 近年,価値観が多様化する社会となり,家族の在り方も様々になっている。また,地域の人々との関係の希薄化が進む中で,家族のつながりはさらに重要なものとなっている。
 
 総務省の国勢調査(2020)によると,世帯の家族類型別一般世帯数は,核家族世帯が54.2%であり半数を占めている。ここで言う核家族は,「夫婦のみの世帯」「夫婦と子どもから成る世帯」「一人親と子どもから成る世帯」を指す。核家族世帯の増加は,必然的に一世帯あたりの人数の現象に繋がり,家族間のつながりが濃く重要になっていることが予想される。

 さらに,2020年から本格的に流行した,新型コロナウイルスの影響による家族のつながりの変化についても着目したいところである。地域社会の暮らしに関する世論調査(内閣府,2021)では,人々に「新型コロナウイルス感染症の影響を受け,現在の暮らしについてより重要と意識するようになったことはありますか。」という質問を投げかけている。その結果,「健康や体調の管理」という回答に次いで「家族のつながり」という回答が多くなっている。突如現れた感染症による暮らしの変化という点で,「健康や体調の管理」という回答は予想通りだ。しかし,「家族のつながり」という回答からは,人々の心理的なつながりや信頼関係に対する考え方にも変化がみられたということがわかる。ここで注目したいのが,「家族のつながり」だと回答した人は,「知人・友人とのつながり」や「地域社会とのつながり」と回答した人よりも圧倒的に多いということだ。こうした事実は,地域の人々との関係の希薄化が社会問題になっているという現状との関連も見出すことができ,深い友人関係を築く人も減少しているという近年の傾向がうかがえる。
 
 このように,核家族化の進行や新型コロナウイルス感染症の影響を受けた暮らしを経た気付きによる,地域の人々との交流機会の減少,そして友人との付き合い方の変化によって,家族のつながりは人々にとってさらに重要なものとなっている。そこで本研究では,家族の中でも親子関係の結びつきに着目する。



next