【問題と目的】

 
1.はじめに
第59回学生生活実態調査(全国大学生協連,2024)によると,日常生活における悩みや気にかかっていることとして,「授業・レポート等の勉学上のこと」を約45%もの学生が挙げている。
また,「時間が足りないこと」と約27%の学生が挙げており,学生にとって課題やレポート等の提出物が少なからず負担になっていることがうかがえる。
そのような状況の中で,私たちはやらなければいけないことをつい後回しにしてしまうことがある。このような行動は「先延ばし行動」(Procrastination)と呼ばれており,これまでの研究で学生のみならず一般人も多くが一度は体験したことのある問題であることが明らかになっている(林,2007)。
また,課題の提出やテスト勉強などの学習場面において大学生の70%以上が先延ばしをしてしまうこと(Ellis & Knaus,1977)や大学生において期末レポートを書くとき,翌週提出する課題をするとき,試験期間に勉強するときに特に先延ばし傾向が見られること(Solomon & Rothblum,1984)が報告されている。
つまり,先延ばし行動は大学生においてよくみられる傾向であることが示されている。
先延ばし行動の原因の一つとして性格特性が挙げられ,これまでの研究でも楽観性や悲観性,完璧主義などとの関連が検討されてきた。
また,先延ばしをすることで自身にマイナスな結果を招くとわかっていてもしてしまう「深刻な先延ばし」をする人は未来を軽視する傾向にあることも明らかになっている(Liu&Feng, 2019)。
これは,未来志向が低いために起こるもので,現在と未来を結び付けて考えたり,将来の目標を計画しそのために努力することが苦手だからではないかと考えられる。
つまり,未来に対しある程度明確な計画や夢がある人と未来に目標や夢がない人では先延ばし傾向に差があることがうかがえる。
本研究では,性格特性である楽観性,自己効力感と時間に対する捉え方によって先延ばし傾向のどのような影響が見られるのかについて検討する。

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