1.はじめに
近年,結婚を取り巻く状況が変化している.厚生労働省(2023)の調査によると,未婚率は男女とも,どの年齢階級においても長期的に上昇してきているとのことである.また,若者(18歳〜34歳)の生涯の結婚意思を見ると,「いずれ結婚するつもり」と考えている未婚者の割合は,1990年代半ば以降,男性は約85%程度,女性は約90%程度と比較的安定的に推移してきたが,2021年では従来よりも減少し,男性は81.4%,女性は84.3%となった.「一生結婚するつもりはない」と答える未婚者は2000年代に入って増加し,2021年では,男性で17.3%、女性で 14.6%となった.さらに,内閣府(2021)の調査では,20〜30代男女の中で,「結婚意思なし」との回答をしたのは,女性は20代で14.0%,30代で25.4%,男性は20代で19.3%,30代で26.5%であり,決して少なくない数となっている.このように,未婚者や結婚意思を持たない若者が増加傾向にある.
結婚に対する意思の変化について,内閣府(2021)では,積極的に結婚したいと思わない理由について,特に独身女性が「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」を挙げている(20〜30代:女性38.6%,男性23.3%).その背景には,社会や周囲,また,自分自身のアンコンシャス・バイアスの他,仕事・家事・育児・介護のバランスを取ることに苦労している既婚女性の姿を見て判断している可能性もある.アンコンシャス・バイアスとは無意識の偏見であり,自分自身が気付かずにもっている偏った見方や考え方のことである(パク,2021).パク(2021)は,自分自身にバイアスをかけると,本来持っている能力が発揮できなくなると述べており,西川(2022)は,無意識のうちに自分の性の役割を強く意識すると,その役割を果たそうと強く思い込んでしまうことを述べている.
また,青年の結婚観に影響を与える要因として,両親の夫婦関係が挙げられている.山内・伊藤(2008)は,両親の夫婦関係から青年の結婚観への影響に関するこれまでの研究について,ほぼ一貫して両親の離婚や葛藤が子のネガティブな結婚観の形成に寄与することが示されてきたと述べている.
以上を踏まえ,本研究では,大学生の結婚観に与える影響について,性役割観と両親の夫婦関係を要因として考え,検討していく.
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