1.はじめに
1. 青年期は,急激な身体的変化による個人差の発生や,身体的変化に伴う自己概念・価値観の不安定化,受験や就職のような競争における自他の差異の意識化などによって,他者との比較が生じやすい時期である。高田(1999)は,高校生や大学生が社会的比較を頻繁に行うことを明らかにしている。社会的比較を頻繁に行うことで自他との差異を意識化することは,アイデンティティの追及に必要なことではあるが,青年によっては否定的に働く場合が推測される。返田(1986)は,青年期について,他の時期と比較し劣等感が強く感じられる時期だと指摘している。特に近年では,SNSが発達していることもあり,日常生活において他者と比較する場面が自然と増えている。しかし,劣等感が否定的に働く場合も存在する一方で,劣等感を抱くことは,人格形成や適応に向かう動機形成と考えることもできる。劣等感などの感情によって引き起こされる行動を補償行動と呼ぶが,適切な補償行動を行うことで劣等感が解消される場合もある。
そこで本研究では,劣等感が自尊感情に影響を与える中で,劣等感の補償行動がどのように影響しているかについて研究していく。
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