考察
本研究では,現代の大学生において劣等感と劣等感に対する補償行動,劣等感と自尊感情の関連についてみながら,劣等感を抱き補償行動を行うことが自尊感情にどのような影響があるのか,男女の性差もみながら明らかにすることを目的とした。まず,劣等感と劣等感反応特性,劣等感と自尊感情にどのような関連があるかについて検討した。次に劣等感と劣等感反応特性の交互作用が自尊感情に与える影響について検討した。最後に,各尺度の下位尺度に関しての性差について検討した。
本研究では,以下の4つの仮説を立てた。
仮説1:劣等感の8領域において,「家庭水準の低さ」と「運動能力の低さ」は自分の力で根本的に解決することが困難であるため,問題と正面から向き合わず逃避する補償行動である「防衛反応」得点が高い。
仮説2:劣等感の8領域において,特に大学生が劣等感を抱きやすい対人関係における「異性との付き合いの苦手さ」「友達づくりの下手さ」得点が高い人は,自尊感情得点が低くなる。
仮説3:劣等感の8領域において「友達づくりの下手さ」得点が高い人でも,劣等感反応特性において「努力志向性」得点が高ければ,自尊感情得点が高い。
仮説4:対人的条件で自尊感情が変動する女性より,自尊感情が個人的条件によって変動する男性の方が自尊感情が高くなる。
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