考察


4. 性差に関して

 仮説5について検討するため,性差を求める下位尺度のt検定を行った。 t検定の結果より,「自尊感情」,「友達づくりの下手さ」,「防衛反応」で有意差がみられ,男性より女性の方が高い平均値を示した。この結果から,男性より女性の方が自尊感情が高いが,友達づくりの下手さには男性よりも劣等感を持っており,相手との関係を重視していることや,劣等感を持っても自らのなかで解決させることが示唆された。

 仮説5について,男性よりも女性の自尊感情得点の平均値が有意に高かったため,女性より男性の自尊感情得点が高いという仮説は棄却された。この結果について考察を行う。北村(2011)が,女性は相手との関係において自然と自分が変化する人ほど,自尊感情が不安定であることを示しており,その中でも相手との関係やその場の状況に応じて自然と自分が変化する女性ほど自己評価の規準が流動的になり自尊感情が不安定になると指摘していることから,本研究の被験者は相手との関係においても自己を確立させており,自己評価も安定している女性が多かったことが考えられる。「友達づくりの下手さ」について有意な差が見られたことに関して,北村(2011)も女性は相手との関係において自然と自分が変化するものほど,自尊感情が不安定であることを示している。本研究でも,男性より女性の方が劣等感尺度における「友達づくりの下手さ」得点が高かったことは,女性が対人関係を重視しているからだと考えられる。「防衛反応」について有意な差が見られたことに関して,石坂・藤森(2019)の研究では友人関係領域での劣等感の補償について,劣等感を強く感じない者は代償行動で補償を行い,劣等感を強く感じる者は防衛的行動で補償を行うという結果が示されている。また,佐久間・無藤 (2003)に よると,女性は男性に比べて,本当の自分を相手 に表明できずに隠すことを見せかけの自己行動とみなして悩む傾向にある。t検定の結果より,男性より女性の方が劣等感尺度における「友達づくりの下手さ」得点が高かったことから,先行研究と同じように男性よりも女性の方が防衛反応の得点が高くなったことが考えられる。



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