T.問題と目的





 自己の印象をある一定方向へと調節しようとする試みを自己呈示といい、人は主に望ましい自己の印象を抱かせるような自己呈示を行っている。中でも対人場面において重要な情報源であり、とりわけ注目度の高い顔を飾り操作する化粧は自己呈示の側面を持っているといる。なぜならば、化粧は他者によって、場所によって比較的容易に対外的な印象効果を操作することが可能であり、このことによって内面的にも外見的にも異なった自己になろうとしているからである。この自己呈示に不可欠な能力としてあげられるのが自己主張をする能力、親密な関係を維持することのできる能力、新たな関係を開始できる能力等を含む社会的スキルであり、また化粧という非言語的な手段での自己呈示をおこなっているということで非言語的な行動によって自分の伝えたいことをうまく表せる能力と、相手が何を伝えたいのか、あるいはどのような感情状態にあるのかを読み取る能力、またこの他に非言語的な行動を意識的に統制するような能力を含む非言語的スキルを取り上げ、これらのスキルと化粧との関係について検討していくことが本研究の目的である。ここで、非言語的表出行動の少ないものほど他者の非言語的表出行動に対して敏感でるという先行研究があり、社会的スキルと非言語的スキルとの関係には、先行研究より、他者の非言語的表出に敏感なものは、いつ、どのように他者と関係を持てばよいのかに気づくことができるので、親密関係の維持や新たな関係を開始することにおいて優れているといえる。しかし、化粧によって自己をどのように表現するかは個人によって異なっているといえる。つまり、人が他者との相互作用の中で化粧行動を行う以上、化粧によって獲得しようとするものは何であるのか、何のために化粧をしているのか等という化粧に対する動機によって、個人の化粧に対する態度は異なっていると考えられる。この化粧対する態度として考えられるものは、他者からの評価を得るために化粧をしている「対人的効用」と自己の満足感を得るために化粧をしている「自己満足感」また、化粧という外見での自己の呈示に特別注意を払わない「化粧無関心」の3つである。そこで問題となってくるのは、化粧に対する態度によって自己呈示に必要な能力である、社会的スキル、非言語的スキルの傾向が異なっているのではないだろうか、ということである。


ここで考えられる仮説を以下に示す。
@化粧という外見での自己呈示に関して無関心なものは、非言語的表出が少なくても、他者の非言語的表出に敏感であり、親密関係の維持、関係を開始することにおいて優れている。
A対人的効用を動機に持って化粧を施しているものは、他者への印象を操作し、他者からの評価を敏感に察知しているので、非言語的表出の多少に関わらず、他者の非言語的表出に敏感であり、親密関係の維持、関係を開始することにおいて優れている。
B自己満足感を得るために化粧を施しているものは、他者からの評価よりも自己充実感を充たすことを目的としているので、非言語的表出が多く、自己主張に優れている。




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