結 果 と 考 察  



1.各尺度の因子構造および信頼性
 
 


T.孫―祖父母関係評価尺度の因子構造および信頼性
 主因子法、プロマックス回転により、
「存在受容」「日常的・情緒的援助」「金銭的援助・甘やかし」「世代継承性促進」の4因子が抽出。

 

  U.加齢に対するイメージの因子構造および信頼性

 主因子法、プロマックス回転により、
「充実」「社会的望ましさ」「活動性」「豊かさ」の4因子が抽出。

 

  V.時間的展望体験尺度の因子構造および信頼性

 主因子法、プロマックス回転により、
「目標指向性」「過去受容」「現在の充実感」「希望」の4因子が抽出。
 

 

 

 


 

2.性別による孫―祖父母関係評価、加齢に対するイメージおよび時間的展望体験の違いについて
 
 孫―祖父母関係評価尺度、加齢に対するイメージおよび時間的展望体験尺度から抽出された下位尺度において、それぞれ男女差があるのかどうかを検証するため、性別を独立変数、各下位尺度得点を従属変数としたt検定を行った。

祖父母―孫関係評価、加齢に対するイメージおよび時間的展望体験において、有意な性差は見られなかった。

 時間的展望に関しては、Platt&Eisenman(1969)が、大学生において男子よりも女子の方が未来に予想する出来事や経験の数(density)が大きいことを示している。また、女子は男子よりも過去において概念化された将来の時間的範囲の長さ(extension)が長いという結果を得ている。これらのように、densityやextensionという認知的側面において先行研究では性差が見られているが、今回はその先行研究の結果を支持する結果とはならなかった。

性別よりも、その人自身の経験が孫―祖父母関係評価や加齢に対するイメージ、時間的展望体験に影響するものと考えられる。

 

 

 

 


 

3.どの祖父母をまず初めに思い浮かべたかによる孫―祖父母関係評価と加齢に対するイメージ、時間的展望体験の検討
 
祖父母選択ごとの1要因4水準の分散分析を行った。
 
T.「孫―祖父母関係評価」得点について
 存在受容 母方祖母>父方祖父 有意傾向
        母方祖母>父方祖母 有意な主効果

 日常的、情緒的援助 母方祖母>母方祖父 有意傾向

U.「加齢に対するイメージ」得点、V.「時間的展望体験」得点については有意な主効果は見られなかった。
 

 青年期の孫にとっての祖父母世代は、「男は外で仕事、女は家で家事」という性役割がはっきり分かれていることが一般的であった。このことから日常的な世話をするのは、祖父よりも祖母の方が多かったためこのような結果になったと考えられる。また、その性役割から孫との接触の頻度や質にも差が生じた可能性がある。

 

 

 

 

 


 

4.孫―祖父母関係評価と加齢に対するイメージ及び時間的展望体験の関連について
 
 
孫―祖父母関係評価と加齢に対するイメージ及び時間的展望体験の関連を見るため、階層的重回帰分析を行った。以下は全てを対象としたもの、そしてまずはじめに思い浮かべた祖父母別によるものである。

<全体>

 
 祖父母を通して命の繋がりに尊さや誇りを感じ、その祖父母から年齢を重ねることは社会的にも望ましいと思うようになることで、自分の将来を肯定的に捉えられるようになり、目標を明確に持つことができるようになったり、希望があるものだと認識できるようになる
のではないだろうか。

 一方、「現在の充実感」は「豊かさ」から負の影響を受けていた。現在ではない未来の豊かさを意識することがかえって現在の自分とを比較させてしまい、まだ見ぬ未来の方が現在よりも豊かなものと考えてしまうために現在の充実感を低めてしまうのではないだろうか。従って、意識的に低めるというよりも寧ろ低くならざるを得ない状況になっていると考えられる。

  また、祖父母による「金銭的援助・甘やかし」は加齢に対するイメージにも時間的展望体験にも影響を与えなかった。これは、金銭という道具的な援助役割よりも、青年期の孫の情緒に強く作用させるような役割こそが時間的展望を確立させるのに必要であると考えられる。

 

<父方祖父>

<父方祖母>

<母方祖父>

<母方祖母>