結果
異性不安について
異性不安尺度として使用した項目全29項目に対して重み付けのない最小二乗法、
プロマックス回転の因子分析を行い、因子解釈の可能性と尺度の信頼性(α係数)から5因子が妥当であると判断した。
第1因子は、従来の異性不安尺度(富重, 2000)から引用した項目から構成され、
緊張・苦手意識因子とした。第2因子と第3因子は、あらかじめそれぞれ「自身の性としての魅力に関する不安」
「理想との不一致に関する不安」として想定した項目がそのまま採用され、
魅力不安因子、理想不安因子とした。第4因子と第5因子は、あらかじめそれぞれ「コミュニケーションに関する不安」
「性差に関する不安」として想定した項目の中からそれぞれ構成され、
コミュニケーション不安因子、性差不安因子とした。
性役割意識と自身の性の受容との関連
性役割意識と異性不安の関連を検討する上で、性役割意識と自身の性の受容との間に
交互作用が見られる可能性がある。そのため、まず性役割意識と自身の性の受容を独立変数に、
異性不安の5因子と異性不安総合得点の6つをそれぞれ従属変数とする2要因分散分析を男女別に行った。
しかし、交互作用は有意にならなかった。
ただし、女性において、理想不安に対する異性である男性についてのHumanity性評価(以下、FMH評価
(調査協力者の性、質問紙における評価対象の性、評価対象における評価した性役割の順にアルファベット化してある))の主効果(F(5,108)=5.59, p<.05)と、
同様に、男性についてのFemininity性評価(以下、FMF評価)の主効果(F(2,108)=7.18, p<.05)が見られた。
そこで、FMH評価、FMF評価における理想不安の効果についてLSD検定を用いて多重比較を行った。
FMH評価の低群と中群の間に5%水準で有意な差が見られ、低群は中群に比べて有意に理想不安を低く評定していた。
FMF評価の低群と高群に5%水準で有意な差が見られ、低群は高群に比べて有意に理想不安を低く評定していた。
また、自身の性の受容群と非受容群においてt検定を行った。
男性では有意な結果が得られなかったが、女性では緊張・苦手意識以外の4側面と異性不安総合得点において有意差が見られ、受容群は非受容群に比べ、有意に異性不安が低かった。
性役割意識と異性不安の関連
自身の性役割を意識することと、異性の性役割を意識することは異性不安に与える影響が違う可能性があるので、
男性が男性について評定した性役割意識(MMM評定、MMH評定、MMF評定)と、
男性が女性について評定した性役割意識(MFM評定、MFH評定、MFF評定)、
女性が男性について評定した性役割意識(FMM評定、FMH評定、FMF評定)、
女性が女性について評定した性役割意識(FFM評定、FMH評定、FFF評定)のそれぞれ3要因を独立変数とし、
異性不安の5因子と異性不安総合得点のそれぞれをを従属変数とする重回帰分析を行った。
男性において、異性である女性への性役割意識が異性不安を予測することがわかった。
→MFF評価が高いと、性差不安、魅力不安、異性不安総合得点も高いという関係が見られた。
→MFH評価が高いと、性差不安、緊張・苦手意識は低いという関係が見られた。
女性において、異性である男性への性役割意識が異性不安を予測することがわかった。
→FMF評価が高いと、理想不安も高いという関係が見られた。
→FMH評価が高いと、コミュニケーション不安が低いという関係が見られた。
また、女性において、自身の性である女性の性役割意識が異性不安を予測することがわかった。
→FFF評価が高いと、コミュニケーション不安、緊張・苦手意識、魅力不安、性差不安も高いという関係が見られた。
→FFH評価が高いと、理想不安、異性不安総合得点、コミュニケーション不安が低いという関係が見られた。
方法
考察
HOME