方法



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T.インタビュー

 @)対象児:
X市内の公立小学校の特別支援学級に在籍する、知的障害を伴う4〜6年生の児童6名(男児2名・女児4名,平均生活年齢10歳7ヶ月・平均精神年齢7歳0ヶ月)であった。精神年齢はDAM(グッドイナフ人物画知能検査法)によって測定した。対象児の診断は高機能自閉症が2名、広汎性発達障害が1名、知的障害が3名であった。

 A)課題:用意した課題は「自己理解質問」と「友人認識質問」の2つである。
自己理解質問は、小島・池田(2004)を参考に8項目を作成した。友人認識質問は、小学校用学校不適応感尺度(戸ヶ崎・秋山・嶋田・坂野,1997)における「友人との関係」項目を元に5項目を新たに作成した。また、友人認識質問に付随する質問をそれぞれ1つ(計5問)用意した。新たに作成したのは、元の尺度の表現が直接的なもののため児童への影響を考えてやさしい表現にしたほうが妥当だと判断したからである。質問項目はTable1の通りである。
回答は自由回答で行い、抽象的な質問(例:どのくらい〜?) については、実験者から3つの選択肢 (とても・全然・ふつう) を提示する場合があった。

B)手続き:インタビューは、実験者と対象児の1対1で特別支援教室の一角で行った。課題を行う前に、対象児と簡単な日常会話をしてからインタビューを開始した。課題を開始する前に「これから○○さんにいくつかの質問をします。わからないとか答えたくない質問があれば私に言ってください。」と教示してからインタビューを開始した。対象児の回答はICレコーダーと筆者によるその場での書き取りによって記録した。

インタビュー質問項目
【自己理解質問】
1.自分のこと好き?きらい?
2.どんなところが好き/きらい?
3.自分のいいところってどこ?
4.自分の悪いところってどこ?
5.自分のいいところと悪いところ、どっちが多い?
6.○-○の友達と一緒にいるときの自分は好き?
7.友達とおうちの人、どっちの人といるほうが好き?
8.どうしてそう思う?

【友人に対する認識】
1.○-○のお友だちはあなたのことを好きだと思う?
どのくらい好き/きらい?
2.○-○の友だちは遊びに誘ってくれる?
どのくらい?
3.○-○の友達はあなたが頑張ったらほめてくれる?
どうやって?
4.○-○の友だちはあなたを信用していると思う?
どのくらい?
5.手伝ってほしいとき、頼める友だちはいる?
何人くらい?

U.観察

 @)対象児:
先に行った自己理解質問・友人認識質問インタビューの結果から児童2名・A(男児・6年)とB(女児・6年)を対象とした。
A:男児。高機能自閉症と診断されている。特別支援学級には4年生から所属し、国語と算数以外の教科は交流学級で学習している。戦いごっこと戦隊ものが好きであり、休み時間は戦いごっこをして過ごすことが多い。
B:女児。高機能自閉症と診断されている。特別支援学級には1年生から所属し、国語と算数以外の教科は交流学級で学習している。ビデオや本の物語の中に入ることが多く、役になりきっていることがしばしばみられる。
観察対象をA・Bの2名にした理由は以下の通りである。
@Aは自己理解質問において、自分は悪いところが多く友人(クラスメイト)は自分のことを好きだとは思っていないと答えている。自己・友人に対する認識がはっきりしており、日ごろから自己に関する発言(「どうせ俺なんて…」「我慢だA(自分の名前)」など)が多く見られる。
ABは自己理解質問において自分のことを好きだと答え、友人(クラスメイト)に対する認識も比較的ポジティブなものであり自己や友人に対する認識がはっきりしている。
B本研究の目的は、「障害のある子どもの自己理解と友人に対する認識との関連をみる」というものである。AとBは自己・友人のとらえ方が対照的であり、今回の論文の目的を考察するのに適しているということができる。よって、この2人の言動や友人との関係を観察することで、より深く自己理解と友人に対する認識との関連をみることができると考える。

A)期間
平成19年11月12日から12月13日の間、週に3回のペースで観察を行った。全13回観察を行った。

B)手続き
約1ヶ月の間、週に約3回のペースで学校を訪れた。それ以前にも、同年5月から週に1回のペースで学生ボランティアとして対象児との関係をつくっていた。観察中もボランティアとして対象児と行動をともにし、11月12日から19日の間は朝の会から清掃の時間まで、それ以降は朝の会から下校までの対象児の言動を観察した。記録は、適宜筆記によってノートに記した。観察の順番は一日ごとに交互に行った。観察場面は@朝の会A各授業後の休み時間B昼休みC清掃時D帰りの会E下校時である。
この場面を設定した理由は、対象児と他の児童・クラスメイトが接触する機会が多いと考えられるからである。また、この場面は教師の目が児童に届きにくい場面であり、対象児と友人との普段の関係がよくみえる場面である。本研究の目的は、対象児の自己理解に友人関係がどのように関連しているのかを考察することであり、この目的に沿っていると判断してこの場面を設定した。記録する言動は以下の通りである。
@自己に関するもの:
例)「僕は(私は)〜なの?」「今日、僕(私)は逆上がりができた。」など
A友人(クラスメイト)に関するもの:
例)「〜ちゃんと一緒に遊んだ。」「〜君と勉強した。」など
B友人との関わり方の様子:
例)視線の方向や態度、など
C友人らの対象児に対する関わり方の様子:
例)対象児に対する言葉遣いや態度、など

C)分析資料
1.筆者による記録
2.担当する教員へのインタビュー記録
3.ムードル上の記録:
ムードルとはインターネット上での教育を行うウェブページである。ゼミ活動の一環として本研究の協力校へ週に1回、学生がボランティアとして訪問しており、その際の児童の特徴的な言動をムードルに記録し、情報を共有している。その記録から対象児の自己や友人に対する記述のあるものを資料として引用する。