総合考察@


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0.結果のまとめ
本研究で明らかになった、インタビュー・観察の結果のまとめを以下に示す。

<インタビュー結果>
インタビュー結果全体の回答を通して、肯定的な回答よりも否定的な回答が多く、対象児全体として否定的な自己理解をしていることがわかった。友人といるときの自己評価項目において、家よりも友人といるときのほうが楽しいと回答した対象児は3人、両方と回答したのは1人であった。また、自己評価・友人評価の質問項目の回答を得点化した結果、自己理解が肯定的であると友人認識も肯定的であるということ、自己理解が否定的であると友人認識も否定的であるということが示された。さらに、知的障害のある対象児は自己理解・友人認識ともに否定的である一方で、広汎性発達障害のある対象児ではそのような傾向はみられず、自己・友人評価ともに肯定的であるのが2名、否定的な傾向であったのが1名であった。

<観察結果>
【A児】
個別インタビューの結果、Aの自己理解は否定的な傾向があり、それと同様に友人に対する認識も否定的であった。観察の結果、自己・友人に関するエピソードともに否定的なものが多かった。また、Aの自己理解・友人認識において以下の4点のことが明らかになった。
1つ目は、Aは自分のペースを乱されるなど、自分にとって嫌なことがあると自己を否定的にとらえやすいということである。2つ目は、自分の「我慢できないところ」に対して否定感をもっていることである。3つ目は、Aは友人へ自分から話しかけることは少ないが、友人(クラスメイト)に対して「一緒に遊びたい」という思いをもっていること、その行動がAの特有の行動スタイルとなってあらわれている、ということである。4つ目は、友人に対する認識がAの自己理解へと影響している可能性があるということである。

【B児】
個別インタビューの結果、Bは自己理解・友人への認識ともに肯定的であることが示された。観察の結果、自己理解では否定的なエピソードが多くインタビュー結果とのズレがみられた。また、Bの自己理解・友人認識において以下の4点のことが明らかになった。
1つ目は、Bが自分を肯定的にとらえている一方で、失敗に対する不安や恐れが大きく、自己否定感へとつながっていることである。2つ目は、Bは「友人がほしい」という思いがあり、自ら積極的に関わろうとするが、Bからの一方的な関わりとなっているということである。3つ目は、友人を作ることと中学校へ行くということが結びついてBのしんどさの原因となっていることである。4つ目は、Bの自己理解と友人へ認識の間には関連があることである。
インタビューと観察の結果から以上のことが明らかになった。本研究の目的は、発達障害のある子どもと友人との関係に注目し、障害のある子どもの自己理解と友人への認識との関連をみること、そして自己理解と友人認識には関連があるという仮説を提起することであった。以上のことから、発達障害のある子どもの自己理解と友人への認識との間には関連があるこという仮説が提起された。
全体のインタビュー結果の考察はすでに行っているため、ここではA・B児のインタビューと観察の結果を中心に考察する。