総合考察B


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2.支援のあり方について
これまでの結果・考察を踏まえ、支援のあり方を検討する。本研究の結果から、知的障害と広汎性発達障害のある子どもの自己理解には違いがみられたが、自己に対して否定的な感情を抱く子どもが多いということが示された。

知的障害のある子どもについて、自己を否定的にとらえる原因と考えられるのは周りのクラスメイトとの比較であった。彼らに対する支援として、他者との違いを認めつつも「自分らしさ」も認められるような支援が求められると考えられる。他者と自分との比較ができることは、自分を客観的にみることができているということであるから、この場合、他者と自己との比較をすることが問題なのではなく、比較した後の自分のとらえ方をどのように行うのかに問題がある。他者との違いを感じつつも、自分の良いところや誇れるところを見つけることができるための支援が必要となる。具体的には、子どもの良いところやできるようになったことを本人に理解できるように伝えることがあげられる。このことによって、子どもは自己に対する自信を得ることができ、自己肯定感の基盤になると言うことができる。

また、このことは知的障害のある子どもだけでなく、広汎性発達障害のある子どもについても同じことがいえる。それはAに対する支援で具体的に述べることができる。Aは我慢できない自分に対して否定感を持っており、自制心を獲得している段階であるといえる。自分でも我慢しようと努力しているが失敗してしまうことを自覚していると考えられる。まずは、Aの「我慢しようと努力している」という姿勢を十分に評価し、「我慢する」ということに対して否定的な感情を持たせないようにすることが重要である。また、Aは以前と現在の自己を比較して以前に比べてできるようになったところを評価することができている。これを基に、Aに自己肯定感を持たせるため、周囲の支援者はAの成長を認める声かけ、例えば「今日は昨日よりも5分も長く集中して勉強することができたね」やそれを形として残すことを行うことが有効などではないだろうか。

その一方で、障害特性を配慮した支援も必要である。例えば、Bに対する支援としては、他者の思いや考えに気づかせ、Bが安心して過ごすことのできる場所をつくることがあげられる。本研究において、Bは友人をつくることに対してとても積極的であると同時に、それが彼女のストレスとなっていることが推察された。そのことは、別府(2005)のいう「○○の場合□□すべき」という論理に近い考え方をBがもっていることからもうかがうことができる。以上のことから支援者は、Bが安心して過ごすことができる場所を提供し、しんどさに共感することが求められる。それに加え、Bが友人などの他者と関わる際には、Bからの一方的な関わりにならないように、Bに他者の考えに気づかせる必要がある。具体的には、不安になったらいつでも出入りできる部屋などの人的・物的環境を整えること、自分を客観的にとらえる練習をすること(例えば、他者との関わりがうまくいかなかったときに振り返りをする)があげられる。

今後の課題
本研究では、自己理解と友人関係との関連をみてきたが今回の研究を通して友人関係のみを扱うのでは不十分だと感じた。なぜならば、本研究の結果から示唆されたように障害の違いによって自己への否定感や友人との関係・認識が異なると考えられるからである。友人関係に加えて、クラスの雰囲気や教師の理解の必要性、障害のある子どもをどのような位置づけでクラスに紹介するのか、などを考慮した支援をする必要がある。