W.総合考察

 学生のコミュニケーション行為への動機づけと達成感は、ガイダンス期よりも授業案完成期や実践期において高くなった。また動機づけに関しては、ガイダンス期よりも授業案完成期において高くなっていた。このことより、教育学部生が実地研究において学生開発型授業を実践することの効果があったと言えるだろう。
 この実地研究では、「子どものコミュニケーションに関わる授業案を作成し実施する」ことが学生に期待された。つまり学生は、これまでの知見をベースに、子どものコミュニケーション能力を刺激する活動を考え実施することを求められた。このような内容的側面から学生のコミュニケーション行為の中での動機づけが高められたのではないだろうか。達成感に関しては、授業案の完成や実施といった、自らが内容から全てを自己決定する活動を行うことによって達成感が高められたことが考えられる。また授業実施後の学生のポートフォリオからは、授業を実施することで子どもに何らかの効果があったのではないかというポジティブな記述もあった。このように実践中の子どもの様子から実践の効果を学生自身が感じ取れるということは、学生にとって最高のフィードバックになったであろう。さらに多くの学生の記述からは、授業案完成期・実践期ではチューターや現地の教師の的確なアドバイスによって、学生の動機づけが高められ、失敗経験の認知が変化し学習活動が円滑に行われたことが推察された。現地の教師の協力やチューターがうまく機能していたことが伺われる。
 一方、実地研究で活動を進めるにつれて動機づけや達成感が低下した学生もいた。例えば子どもとの関わりに困難を示すが、具体的な対応策が発見できないまま実践が終わってしまう学生もいた。他にも特定の子どもとの関わりや、授業での失敗経験が尾をひいている学生も存在した。今後の実地研究では、担当のチューターを中心とした個別の相談時間等を設けていくことも検討される必要があると感じた。