本研究では、教師の相互援助関係をみることを目的とし、教師が援助をする・援助を受 ける場面の両方の視点から検討する必要があるが、援助をする側の教師の認知については今まであまりふれられていない。また、従来の「状態被援助志向性尺度」については、生徒指導に関する悩み等、援助要請場面が3領域のみであり、教師の援助場面を十分に説明できていないと考える。そこで、援助をする側の教師の認知を測る「援助志向性尺度」と、想定範囲が広く、日常的な援助場面を増やして改良した「状態被援助志向性尺度」の作成と、これらの尺度の構成概念妥当性の検討のため、質問紙調査を行った。 なお、本調査では教師を対象に調査を行うが、予備調査は尺度の構成を確認する目的のみという点と、本調査の早期実施に向けて調査対象者を短期間で集める必要があったという点から、大学生を対象に予備調査を実施した。 |
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調査対象、調査時期と手続き 三重大学共通教育講義の受講生147名に対して、授業中に質問紙を配布して回答を求めた。実施時期は平成22年7月上旬であった。 |
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・フェイスシート 「大学生の援助行動に関する調査」と称し、学籍番号の記入欄を設けた。 T. 特性援助志向性尺度 田村・石隈(2006)を参考に、特性援助志向性尺度11項目に加え、原田(1998)を参考に、援助を手控える意識を測る4項目を作成した。項目の文章の主語を「同僚」から「友人」に変えた計15項目を本研究での「特性援助志向性尺度」とした。質問紙の冒頭には『「友人」は、日頃あなたと親しくしている同じ学科・コースの友人を想定してください。」』と記した。「そう思わない:1」〜「そう思う:5」までの5件法で回答を求めた。 U. 状態援助志向性尺度 日常場面での援助行動を見るため、佐藤(2003)の「教職概論」より「教師の仕事場面」と、原田(1989)の援助行動7型を参考に、計20項目を作成した。予備調査は大学生を対象としているので、教師の仕事を可能な限り大学生の日常生活に置き換えて文章を作成した。質問紙の冒頭には特性援助志向性尺度と同様に『「友人」は、日頃あなたと親しくしている同じ学科・コースの友人を想定してください。」』と記した。「ない:1」「時々ある:2」「よくある:3」の3件法で回答を求めた。 V. 特性被援助志向性尺度 田村・石隈(2006)を参考に、特性被援助志向性尺度12項目を使用した。項目文章の主語は「友人」とし、質問紙の冒頭には特性援助志向性尺度と同様に『「友人」は、日頃あなたと親しくしている同じ学科・コースの友人を想定してください。」』と記した。「そう思わない:1」〜「そう思う:5」の5件法で回答を求めた。 W. 状態被援助志向性尺度 日常場面でどのような援助を受けているのか調べるため、状態援助志向性尺度と同様に、佐藤(2003)の「教職概論」より「教師の仕事場面」と、原田(1989)の援助行動型を参考に計20項目を作成した。予備調査は大学生を対象としているので、教師の仕事を可能な限り大学生の日常生活に置き換えて文章を作成した。質問紙の冒頭には特性援助志向性尺度と同様に『「友人」は、日頃あなたと親しくしている同じ学科・コースの友人を想定してください。」』と記した。「ない:1」「時々ある:2」「よくある:3」の3件法で回答を求めた。 <援助志向性尺度、被援助志向性尺度の構成概念妥当性の検討> X. 援助規範尺度、援助動機尺度 箱井・高木(1987)の援助規範意識尺度を使用した。全29項目のうち、「犯した罪を償わなくても良い場合がある。」は今回の研究の主旨とは異なると判断したため、除外した。また、援助規範尺度に加えて、原田(1990)の援助動機尺度を参考に、10項目を作成した。援助動機のうち、原田(1989)を参考に「援助をすると相手の成長の機会を奪ってしまうので、助けないほうがいい。」という“手控え”を表す動機も含めた。「非常に反対する:1」〜「非常に賛成する:5」の5件法で回答を求めた。 Y. 多次元共感測定尺度 Davis(1983)の多次元共感測定尺度を使用した。『視点取得』(他者の気持ちの想像と認知)、『空想』(架空の人物への同一化)、『共感的配慮』(不幸な他者への同情や関心)、『個人的苦悩』(緊急事態での不安や動揺)の4次元視点のうち、日常場面の援助に関連する会尺度として、視点取得項目7項目と個人的苦悩項目7項目の計14項目を使用した。「全くあてはまらない:1」〜「とてもあてはまる:7」の7件法で回答を求めた。 Z. 信頼感尺度 天貝(1995;1997)の信頼感尺度を使用した。下位尺度『自分への信頼』『他人への信頼』『不信』の中で、本研究は他者との相互作用をみるため、『他人への信頼』『不信』を扱うことにした。『他人への信頼』8項目、『不信』10項目の中から成人版の項目だけを使用し、かつ本研究の内容に沿ったものを選び、『他人への信頼』6項目、『不信』6項目計12項目を使用した。「あてはまらない:1」〜「あてはまる:4」の4件法で回答を求めた。 [. 他者意識尺度、自尊感情尺度 辻(1993)の他者意識尺度7項目、山本・松井・山成(1982)の自尊感情尺度10項目を使用した。「あてはまらない:1」〜「あてはまる:5」の5件法で回答を求めた。 |
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